太陽に似た若い星の周りに生命の材料
【2017年6月16日 アルマ望遠鏡】
将来太陽に似た星に成長すると考えられる原始星を調べることは、太陽系が約46億年前にどのような姿であったのか、またどのような化学組成であったのかを知ることにつながり、ひいては惑星の形成や生命の誕生の研究にもつながっていく。
スペイン・アストロバイオロジーセンターのRafael Martín-Doménechさんたちの研究チームと、オランダ・ライデン天文台 Niels Ligterinkさんたちの研究チームはそれぞれ独立に、へびつかい座の方向およそ400光年の距離にある原始多重星系「IRAS 16293-2422」をアルマ望遠鏡で観測した。そして、生命の起源に密接に関連すると考えられる有機分子「イソシアン酸メチル(CH3NCO)」が放つ電波を発見した。炭素、水素、窒素、酸素原子を含む同有機分子が発する異なる周波数の電波をとらえることができたのは、アルマ望遠鏡が持つ高い感度のおかげだ。
「この星は、まるで有機分子の宝箱です。以前、同じ星の周りで糖類分子が発見されましたが(参照:「アルマ望遠鏡、赤ちゃん星の周りに生命の構成要素を発見」 )、今度はイソシアン酸メチルを見つけました。これらの有機分子は、アミノ酸やそれが連結したペプチドの合成に使われる分子です。つまり、私たちが知っている生命の基本構成要素といえます」(Ligterinkさん、英・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン Audrey Coutensさん)。
Martín-Doménechさんたちはさらに、発見されたイソシアン酸メチルの起源に迫るためにコンピュータ・モデルで分子の形成過程を調べた。すると、ガスと塵粒子のある環境下では、塵の表面での化学反応と気体中での化学反応が順に進むことにより、観測で検出された量のイソシアン酸メチルが作られることが明らかになった。
「この星が太陽の生まれた直後によく似ていること、地球に似た惑星が誕生する可能性があることに、特に興奮しています。生命の材料になるような物質を見つけたことで、私たちが住む惑星にどのようにして生命が生まれたのかを知るためのパズルのピースを、新たに一つ手に入れたことになります」(Martín-Doménechさん、伊・アルチェトリ天文台 Víctor M. Rivillaさん)。
また、摂氏マイナス258度という極低温環境でもイソシアン酸メチルが作られうることも、Ligterinkさんたちの実験から明らかにされた。「イソシアン酸メチルが、そして生命の材料が、太陽に似た極めて若い星の周りで作られることを示す結果です」(Ligterinkさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:太陽に似た若い星のまわりに、アミノ酸の材料を発見
- ESO:ALMA Finds Ingredient of Life Around Infant Sun-like Stars
- Royal Astronomical Society:論文
〈関連リンク〉
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