TRAPPIST-1の外側の惑星に水が存在しうる可能性
【2017年9月6日 ヨーロッパ宇宙機関】
今年2月、みずがめ座の方向約40光年彼方に位置する赤色矮星「TRAPPIST-1」の周りに地球サイズの惑星7つが発見されことが報じられた。これほど多くの地球サイズの惑星が見つかっている惑星系は、現在のところ他にはない。
恒星からの紫外線は惑星大気中の水蒸気を光分解し、発生した水素は惑星から逃げてしまう。その影響を見積もるため、スイス・ジュネーブ天文台のVincent Bourrierさんたちの研究チームがハッブル宇宙望遠鏡でTRAPPIST-1の紫外線放射量を調べたところ、惑星大気から莫大な量の水が失われた可能性を示唆する結果が得られた。
とくに内側の2惑星については大量の紫外線を受けたため、過去80億年の間に地球の海水量の20倍以上もの水を失ったかもしれないという。「これらの惑星では、宇宙空間への大気の流出(大気散逸)が惑星の進化において大きな役割を果たした可能性があります」(米・マサチューセッツ工科大学 Julien de Witさん)。
それに比べ、ハビタブルゾーンに位置する3つを含む外側の惑星から失われた可能性のある水の量は地球の海水量の3倍以下とはるかに少なく、表面には水が残っている可能性もあるという。とはいえ、実際に惑星表面に水が存在しているかどうかについては、残念ながら最終的な判断を下すことはできない。
「外側の惑星が今後打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ望遠鏡の最高の観測候補であることが示されました。一方で、TRAPPIST-1の惑星の特質や、惑星上の環境に生命の存在を許す可能性があるのかどうかを明らかにするためには、理論的研究と全波長における補足的な観測が必要なこともわかりました」(Bourrierさん)。
〈参照〉
- ヨーロッパ宇宙機関:Hubble delivers first hints of possible water content of TRAPPIST-1 planets
- The Astronomical Journal:Temporal Evolution of the High-energy Irradiation and Water Content of TRAPPIST-1 Exoplanets 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/12/17 惑星の外側で塵が集まる様子をアルマ望遠鏡で観測
- 2024/11/18 超高密度スーパーアースとその形成過程の手がかりとなり得る外側の惑星を発見
- 2024/11/07 水星の特異な磁力線から示唆される水の形成
- 2024/09/11 ホットジュピターの内側で、公転が大きく変動するミニ海王星
- 2024/07/29 「灼熱の土星」型の系外惑星で大気から水蒸気の証拠を検出
- 2024/06/18 想定外の軌道を持つ「ミニ海王星」を発見
- 2024/05/30 ローマン宇宙望遠鏡の系外惑星観測用コロナグラフが準備完了
- 2024/05/27 宇宙生命探査の鍵となる「太陽系外の金星」を発見
- 2024/05/21 超低温の赤色矮星で2例目、地球サイズの系外惑星を発見
- 2024/04/18 植物の排熱が地球や系外惑星に及ぼす影響
- 2023/12/05 共鳴し合う6つ子の系外惑星
- 2023/08/02 蒸発する惑星が引き起こす「しゃっくり」
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/27 次々見つかる浮遊惑星、天の川銀河に1兆個以上存在か
- 2023/07/14 公式ブログ:ペガスス座51番星系で新星座を考える
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/03/23 水蒸気で囲まれた原始星に、太陽系の水が経てきた歴史を見る
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す