準惑星ハウメアに環
【2017年10月17日 IAA】
海王星軌道の外側を周る太陽系外縁天体は、小さく暗いうえ、地球からの距離があまりに遠いため、研究が難しい対象だ。しかし、こうした天体がある恒星の前を通過する「食(掩蔽)」現象を観測すると、天体の大きさや形、密度などの物理的特徴を決定することができる。
太陽系外縁部に存在する4つの準惑星のうち冥王星、エリス、マケマケについては、恒星食の観測から様々な情報が得られている。これらに比べて残る1つのハウメアについては、まだ不明な点が多かった。ハウメアは約284年周期で太陽を公転しており、現在は太陽から50天文単位(太陽~地球の50倍)離れたところにある。これまでに知られているハウメアの大きな特徴として、自転周期が3.9時間と非常に短いこと、その高速自転のためラグビーボールのような楕円体をしていることが挙げられる。
「今年1月21日にハウメアがある恒星の前を通過するという予測をもとに、ヨーロッパの12台の望遠鏡で一斉にこの現象を観測しました。そのおかげで、非常に高い精度でハウメアの形や大きさを再決定することができました」(スペイン・アンダルシア天体物理学研究所 José Luis Ortizさん)。
Ortizさんたちの観測から、ハウメアの長軸方向の大きさが2320kmであることがわかった。これは冥王星並みの大きさで、従来の見積もりである約2000kmに比べたかなり大きい。その他、従来の推定よりも反射率が低いことや密度が小さいこと、冥王星のような全球的な大気が存在しないことも確認された。
最も興味深く予想外だったのは、ハウメアを取り巻く環の存在が見つかったことだ。太陽系外縁天体としては初めての発見となる。恒星食の観測データによると、環はハウメアの衛星「ヒイアカ」の軌道と同様にハウメアの赤道面に広がっており、環を構成する凍った粒子はハウメアの自転の3分の1の速度でハウメアの周りを回っている。
環の形成については、他の天体との衝突が起源という説や、ハウメアの自転速度が速いために表面の物質が拡散したという説が考えられている。
「数年前までは、環といえば巨大惑星の周りにあるものしか知られていませんでしたが、最近になってケンタウルス族(木星と海王星の間に存在する小惑星のグループ)に属する小惑星2つにも環が見つかりました。そして今回、私たちはケンタウルス族よりもさらに遠く、特徴も異なる大きな天体に環を発見したのです」(アンダルシア天体物理学研究所 Pablo Santos-Sanzさん)。
「環の存在は、太陽系内のみならず他の惑星系においても、これまで考えられていたよりもずっと普通のことなのかもしれません」(Ortizさん)。
〈参照〉
- Institute of Astrophysics of Andalusia(IAA):Haumea, the most peculiar of Pluto companions, has a ring around it
- Nature:The size, shape, density and ring of the dwarf planet Haumea from a stellar occultation 論文
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