花火のような銀河の衝突現場
【2015年8月18日 Royal Astronomical Society】
天の川の向こう側に、銀河同士の衝突で作られた環状構造が発見された。完全な環が見られる衝突銀河はこれまでに20例以下しか知られておらず、今回の発見はその中で最も私たちに近いものとなる。
衝突銀河ESO 179-13は、さいだん座の方向3000万光年の距離にあり、天文学的には比較的近いところに位置している。距離が近いにも関わらず環の存在が知られていなかったのは、天球上での銀河の位置が天の川に近く、星が密集したエリアの背後で明るい星のそばにあたるためである。
銀河の周囲に見られる環は、衝突の衝撃波で銀河のガスが圧縮され、新しい星の形成が引き起こされて作られる。整った環状構造となるのは、同程度の質量を持つ銀河同士がちょうど中心で衝突した場合という、非常に珍しいものだ。
「見た目が素晴らしいだけではありません。近くにあるおかげで、詳細に研究することができるのです。環の質量は天の川銀河の1%にも満たない小さなものです。これまで考えられていた以上にはるかに小さな銀河同士の衝突でも、環が形成されることがわかりました」(香港大学 Quentin Parkerさん)。
〈参照〉
- Royal Astronomical Society: Celestial firework marks nearest galaxy collision
- Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Kathryn's Wheel: a spectacular galaxy collision discovered in the Galactic neighbourhood 論文
〈関連リンク〉
- 星ナビ.com こだわり天文書評:
〈関連ニュース〉
- 2015/01/30 - ハッブルがとらえた衝突銀河NGC 7714
- 2014/08/28 - アルマやケックIIで観測、衝突銀河のベストショット
- 2014/07/10 - 詳しくわかった、「傘銀河」にたなびく星々の運動
- 2013/05/23 - 110億年前の宇宙に、大銀河同士の合体で星が大量に生まれる現場
- 2013/05/01 - 合体銀河から広がる700万度の高温ガス雲
- 2011/11/24 - 銀河の衝突現場に星の芽を観測
- 2011/04/22 - ハッブル21周年記念に銀河のバラを 衝突銀河Arp 273
関連記事
- 2024/09/20 4億6600万年前、地球には環があったかもしれない
- 2023/11/16 酸素は131~133億年前の宇宙で急激に増えた
- 2023/10/13 天文学者と市民天文学者とのタッグで解明した銀河進化の謎
- 2023/10/05 120億年前の初期宇宙で衝突合体中の赤ちゃん銀河
- 2023/09/22 銀河団のメンバー銀河を用いた宇宙物質量の新測定法
- 2023/02/15 太陽系外縁天体クワーオアーに環を発見
- 2023/01/27 銀河中心から外れた位置に見つかった巨大エネルギー源
- 2023/01/05 成長をやめた銀河、銀河団内に偏って分布
- 2022/09/29 JWST、海王星の環や衛星を撮影
- 2022/09/06 材料を放り出され、星形成を止めてしまった銀河
- 2022/03/04 129億年前の銀河から窒素と酸素を検出
- 2021/07/09 ダークマターの地図をAIで掘り起こす
- 2021/06/17 星が誕生する環境は、銀河内の位置によって異なる
- 2021/04/23 129億年前の宇宙で銀河はすでに回転していた
- 2020/10/30 宇宙初期における銀河たちの急成長
- 2020/10/01 約100億年前の銀河たちが持つ分子ガス
- 2019/12/24 120億年前にすでにできあがっていた巨大銀河の核
- 2019/12/19 宇宙最初の環境汚染、予想外の巨大炭素ガス雲
- 2019/11/06 研究者と共に銀河の謎に挑戦!市民参加プロジェクト「GALAXY CRUISE」
- 2019/07/04 大きな粒子でできている天王星の細い環