詳しくわかった、「傘銀河」にたなびく星々の運動

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【2014年7月10日 ケック天文台

銀河同士の衝突でばらばらになった星々の連なりが長く伸びて取り囲む、6200万光年彼方の「傘銀河」。すばる望遠鏡などを用いた新手法の観測研究で、この星々の動きが詳細にとらえられた。


傘銀河と、周囲に伸びる恒星ストリーム

傘銀河と、周囲に伸びる恒星ストリーム。挿入図中の印の箇所は、ぶつかった銀河の中心核の名残り。今はわずかな星の集まりとなっている。すばる望遠鏡と0.5mブラックバード遠隔望遠鏡の撮影画像を合成。クリックで拡大(提供:R.Jay GaBany)

恒星ストリームの立体モデル

恒星ストリームの立体モデル。衝突で引き裂かれた銀河の恒星が尾を引くように伸びている。クリックで拡大(提供:N.Singh/UCSC)

かみのけ座の方向6200万光年の距離にある「傘銀河」(NGC 4651)は、星々が連なる「恒星ストリーム」が周囲を取り巻く姿からその名が付けられている。このストリームは、かつてこの銀河に衝突してばらばらになった小さな銀河の名残りだ。ゆくゆくはもう一方の大型銀河に完全に吸収され、傘銀河は傘を失ってしまうと予測されている。

オーストラリア天文台のCaroline Fosterさんらは、すばる望遠鏡でこの銀河をパノラマ撮影し、ケックII望遠鏡で恒星ストリームの運動をとらえた。ストリームを構成する星々はひじょうに淡いので、合体が進むようすを詳しく知ることは従来難しかった。だが今回は、ストリームと同じ動きをする球状星団や星雲、電離水素ガスの動きを代わりに追うことで、衝突合体のプロセスを詳しく立体モデル化することができた。

この新しい手法により、さらに多くの銀河について調査が可能となるだろう。それにより、銀河の成長で重要な役割を担ってきた小規模な銀河の衝突合体がどのくらいの頻度で起こっているかが把握できると期待される。