中心のブラックホールに制御される大きな銀河の星形成

このエントリーをはてなブックマークに追加
大きな銀河における星形成の歴史と銀河中心に潜むブラックホールの質量との間の密接な関係が最新の研究から明らかにされた。

【2018年1月10日 US Santa Cruz News Center

大質量銀河の中心には太陽の百万倍以上の超大質量ブラックホールが潜んでいると考えられており、星に重力的な影響を及ぼしたり、活動銀河核として強力な放射エネルギーを周囲に供給したりする。このエネルギーによって銀河内に存在するガスが高温になると、ガスが収縮して星となることができなくなり、銀河の星形成が止まる。こうした考えはシミュレーション研究にも反映されているが、超大質量ブラックホールと星形成との関係を示す観測的な証拠が欠けていた。

ケンタウルス座A電波源
巨大楕円銀河「ケンタウルス座A電波源(NGC 5128)」。複数の望遠鏡による波長の異なる観測データを合成。銀河中心に潜む超大質量ブラックホールからエネルギーを得たジェットと、ジェットにより形成されたと考えられる電波で明るく輝く構造「電波ローブ」が見られる(提供:ESO/WFI (Optical); MPIfR/ESO/APEX/A.Weiss et al. (Submillimetre); NASA/CXC/CfA/R.Kraft et al. (X-ray))

米・カリフォルニア大学サンタクルーズ校のIgnacio Martin-Navarroさんの研究チームは、星の運動の分析から質量が計測されている超大質量ブラックホールを中心に持つ大質量銀河について、ブラックホールと銀河の星形成に関する研究を行った。

研究チームは米・マクドナルド天文台ホビー・エバリー望遠鏡による大質量銀河サーベイで取得されたスペクトルを詳しく分析し、銀河の星形成の歴史を復元した。そして、星形成の歴史は銀河の形態や大きさといった特徴ではなく、中心のブラックホ―ルの質量にのみ関連していることを明らかにした。「星々の質量が同じでブラックホールの質量が異なる銀河を比べると、ブラックホールの質量が大きいほど星形成が早く止まり、質量が小さいほど星形成が長く続いていました」(Martin-Navarroさん)。

「銀河の星形成の歴史にブラックホールが及ぼす影響を示す、初の観測的かつ直接的な証拠です」(カリフォルニア大学サンタクルーズ校 Jean Brodieさん)。

活動銀河核の明るさと星形成との関連性を探るこれまでの研究には成功例がないが、その理由についてMartin-Navarroさんは、時間的なスケールが大きく異なるためではないかと考えている。星形成は数億年以上にわたって起こるが、活動銀河核の爆発的な増光が起こる期間は短いからだ。「私たちの研究では活動銀河核から銀河へ流入したエネルギーを調べる代わりに、ブラックホールの質量を利用しました。大きな質量を持つブラックホールへの物質降着は、より強力な活動銀河核からのフィードバックにつながるからです。このフィードバックが強いほど、星形成が早く止まるのでしょう」(Martin-Navarroさん)。

星形成を止めるブラックホールからのフィードバックの正確な性質はまだはっきりしてない。「ブラックホールから銀河へのエネルギー流入の方法は複数あり、星形成の停止がどのように起こるかも様々な考え方があります。最新の観測結果とモデルを一致させるためには、さらなる研究が必要です」(カリフォルニア大学サンタクルーズ校 Aaron Romanowskyさん)。

関連記事