大食いの銀河中心ブラックホールは偏った円盤の影響かもしれない

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アンドロメダ座大銀河などの中心核に存在する「偏った円盤」状の星団が壊れずに長期間存在できるメカニズムが初めて明らかになった。1年に1個という高頻度で星を飲み込む中心ブラックホールがあるのは、こうした円盤の影響による可能性も示唆されている。

【2018年2月8日 University of Colorado Boulder

超大質量ブラックホールが存在する銀河中心部には、重力の作用によってブラックホールを取り巻くように星団が形成される。こうした星団の形は重力の影響で球対称になるはずだが、アンドロメダ座大銀河(M31)などいくつかの銀河では中心が偏った円盤状の星団が観測されている。「偏った中心核円盤」はガスの豊富な銀河同士が合体した直後に作られると考えられているが、形成された円盤が長期間にわたって安定的に存在できる仕組みは謎だった。

アンドロメダ座大銀河
偏った中心核円盤を持つ銀河の一つ、アンドロメダ座大銀河M31(提供:投稿画像ギャラリーより。シマッチさん撮影)

偏った円盤の中では個々の星が楕円軌道を描いて超大質量ブラックホールの周りを回っているが、この楕円軌道自体も時間とともに長軸の向きが回転(歳差運動)していく。そのため、星と星の軌道同士がほとんど重なり合って相互作用を引き起こす場合がしばしばある。米・コロラド大学ボルダー校のAnn-Marie Madiganさんたちの研究チームは、たくさんの楕円軌道がそれぞれ異なる周期で歳差運動をしていたとしても、円盤本体が軌道に及ぼす重力によって、最終的にはすべての軌道が同じ向きに揃って歳差運動をするようになることを初めて示した。このメカニズムによって、偏った円盤は長期間にわたって壊されずに維持されると考えられる。

こうした軌道同士の相互作用によってある軌道が非常に細長い楕円にまでつぶれると、楕円軌道の近点がブラックホールにきわめて近い位置まで近づくことになる。「ついには星はブラックホールに限界まで接近し、バラバラにされてしまいます」(Madiganさん)。

「私たちの研究によると、銀河同士の合体後に『偏った中心核円盤』が作られた場合、超大質量ブラックホールは1年に1個の割合で星を飲み込むと予測されます。これは過去の推定よりも1万倍も高い頻度です」(コロラド大学ボルダー校 Heather Wernkeさん)。

これまでの観測で、中心に超大質量ブラックホールを持つ銀河の中には、星がブラックホールに飲み込まれる頻度が他の銀河に比べてかなり高いものがあるという証拠が得られている。今回の研究はこうした観測例を強く支持するもので、「偏った中心核円盤」を持つ銀河は当初考えられていたよりもありふれた存在かもしれないことを示唆している。今後さらに研究が進むと、銀河の合体や宇宙の進化をより深く理解することにつながるかもしれない。

「M31の場合、銀河の合体が起こったのはかなり遠い昔なので、偏った円盤によってブラックホールへの星の吸収が進むという過程はすでにピークを過ぎているようです。今後、より分解能の高い観測データが得られるようになれば、もっと遠くの銀河の中心核で、M31のものより若い時期の円盤を発見できるかもしれません」(Madiganさん)。

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