今年の6月、初の「宇宙日本食」全29品目が誕生した。宇宙日本食は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する日本人宇宙飛行士の栄養や精神的なストレスの軽減を目的に、日本のメーカーと宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で開発した食品だ。
ハウス食品では、3種のレトルトカレーが宇宙日本食の認定を受けたのだが、そのうちの1つが商品名「スペースカレー(Space Curry)」として、11月5日から一般に販売されている。
この「スペースカレー」は、無重力空間では味覚が鈍るため、味は濃い目、辛さも5段階のうち、上から2番目に調節してあるそうだ。実際の味はどうかというと、まず一口目は甘く、3種入っているきのこにも歯ごたえがあり、トマトやたまねぎの風味が口の中に広がる。辛さは、後味として多少スパイシーさが残る程度だった。つまり、味の面で普通のカレーと大きく異なる点は特にない。唯一の大きな違いはその成分だろう。1食分200グラムの中に、カルシウムが250グラムも入っている。
ところで、レトルトパウチに入った食品は、宇宙ではどうやって温めるのだろうか。電子レンジは、電磁波が周辺の機器に影響を与えるため使うことはできない。実は、船内には特殊な電気オーブンがある。ちなみに、東京のお台場にある日本科学未来館では、実際の資料をもとに作られた宇宙居住モジュールが展示されており、食事からトイレなどにいたる宇宙での生活を実体験に近い形で理解することができる。興味のある人は訪れてみてはいかがだろう。
さて、このカレーが本格デビューするのは、来年の秋となる。なぜなら、認定を受けた食品は、まず一年間常温で保存されなければならないのだ。したがって、このカレーを宇宙で初めて食べる日本人宇宙飛行士は、来年の秋にISSへ向かう若田光一さんとなる。
ただし、初めて宇宙にレトルトカレーを持っていって食べたのは、実は、(現在日本科学未来館の館長などを務める)毛利衛さんなのだ。宇宙飛行士は、許可さえもらえば、自分の好きなものを持ち込むことができる。
毛利さんが持っていったレトルトカレーは、アメリカ人宇宙飛行士にも大好評で、今でも毛利さんはアメリカ人宇宙飛行士から、レトルトカレーを送って欲しいと頼まれるとか・・・。もっとも、アメリカ人はナンのようなものにカレーをつけて食べているそうだ。
ISSでは11月24日に、日本の実験棟「きぼう」とISSとを結合するモジュール「ハーモニー」が完全に起動された。これで、次のスペースシャトルミッションで打ち上げられる「コロンバス」(欧州実験棟)と、2008年2月から順次打ち上げられる「きぼう」をISSに取り付ける準備が整った。
「きぼう」の輸送や取り付けに関わる土井隆雄さん、若田光一さん、野口聡一さん、星出彰彦さんら日本人宇宙飛行士は、10月に筑波宇宙センターでの訓練を終えた。土井さんはその際、「訓練も最終段階に入り、とても緊張感が出てきました。いよいよ打上げが迫っています。「きぼう」は日本の技術の成果でもあり、とても美しい実験棟だと思います。「きぼう」の打上げを成功させ、すばらしい成果をあげることを願っています」と話している。(JAXA宇宙飛行士活動レポート 10月より)
2月から始まる「きぼう」組み立てミッションに思いを馳せながら、この「スペースカレー」を味わってみていかがだろうか。
なお、「スペースカレー」(1個500円)の購入は、ハウス食品のネット販売か一部の科学館(ただし、丸の内オアゾのJAXAiでは、土日祝祭日のみの限定販売)で購入することができる。