[日食情報]気象衛星METEOSATが捉えた月の影
【1999年8月12日】
欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた静止気象衛星METEOSAT7号が、今回の8月11日皆既日食によって地上に映し出された月の影の移動のようすを鮮明に捉えた。
皆既日食とは、月によって太陽が完全に隠され太陽が見えなくなる現象。太陽と地球の間に月が入りこみ、太陽に照らされて生じた月の影が地上に到達した場所で、皆既日食が見られることになる。
その月の影を静止軌道上の宇宙空間から捉えたのが下のMETEOSAT画像だ。世界時10:30にヨーロッパ中央部にあった黒い影が、11:00には黒海西岸、12:00には、カスピ海南部へと移動してゆくようすがわかる。影の位置と皆既帯の書かれた図を比較してみれば、今回の日食でもまったく計算どおりに月と地球が動いていたことが実感できよう。
図をよく見ると、地球の影は実際に皆既日食が見られた範囲よりもかなり広い範囲を覆っているように見える。これはMETEOSATが捉えた月の影は、皆既日食が見られた範囲(本影部分)のみでなく、部分日食が見られた範囲(半影部分)にまで広がっているためである。先月7月28日には日本でも皆既月食が見られたが、見た方は、太陽に照らされた月の明るい部分でも地球の影の縁に近いところでは、月の明るさが少々暗くなっていたことを覚えているだろうか? これもそれと同じ理由で生じたものだ。
ついでながら、いちばん下の世界時12:00の画像を見ると、ヨーロッパ中部より北が雲に覆われているのに対し、東欧〜西アジアにかけてはよく晴れているようすが見てとれる。この空の下で一喜一憂があったことだろう。今回の日食の勝敗は、日食前に示された各地の晴天率に、ほぼ従う結果となったのであった。
静止気象衛星METEOSAT7号が捉えた月の影の移動のようす。世界時10:30にヨーロッパ中央部にあった黒い影が、11:00には黒海西岸、12:00には、カスピ海南部へと移動している。皆既帯の書かれた図と影の位置を比較してみよう。
図は、ベルリン大学のサイトINSTITUT fur METEOROLOGIE der FREIEN UNIVERSITAT BERLIN にある、METOSAT7号の可視画像10枚から作成されたアニメーションGIF画像(1.2MB)より、3枚分を抜き出しアストロアーツにて加筆合成。
上の画像はベルリン大学のサイトにある、世界時9:00から14:00までの10枚分の衛星画像を動画にしたアニメーションGIFより3枚を抜き出して作成した。下のリンクをクリックすれば、その元となった動画を見ることができる。月の影の移動がよくわかりぜひ見てもらいたいところだ。しかしながら、画像は1.2MBあり、通信環境によっては全部を見るまでかなりの時間がかかることが想定されるので注意してほしい。
METEOSAT7号が捉えた月の影のアニメーションGIF(1.2MB)
INSTITUT
fur METEOROLOGIE der FREIEN UNIVERSITAT BERLIN より
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