探査機カッシーニが木星の周りに広がる巨大な雲を発見

【2003年2月28日 JPL News Release

NASAなどが運用している土星探査機カッシーニが、土星へと向かう途上で木星を観測し、木星の衛星の一つであるエウロパの軌道上に巨大なガス雲が広がっているのを発見した。

(木星とその周りに広がる雲を撮影した画像)

高エネルギー中性原子撮像装置で撮影された、木星周辺のようす。中心の放射は木星本体によるもので、両側の2つがドーナツ状の雲を輪切りにして横から見たところに対応する(提供:NASA/JPL/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory)

カッシーニは来年の7月から土星の周りを周回しながら土星本体やその衛星を探査する予定だ。また、一緒に積み込まれた探査機ホイヘンスが約6か月後に切り離されて、衛星タイタンの厚い大気へと突入していくことになっている。土星への途上、2000年から2001年にかけて撮影された木星のデータを解析した結果、木星の周りにドーナツ状に広がる雲の存在が明らかになったのだ。

雲はエウロパの軌道に沿って広がっている。研究グループは、木星からの強烈なイオン放射によってエウロパの表面が巻き上げられ、水の氷の分子が壊されて軌道上に広がったのだろうと推測している。その総量は6万トンにも及ぶということだ。

エウロパよりも内側を回る衛星イオにも似たようなガス雲があるが、イオの場合は衛星自身の火山活動によって生み出されたもので、主に硫黄や酸素からできている。エウロパの場合、衛星そのものは活動もなく穏やかなので、この水の雲は、木星からの影響がひじょうに激しいことを直接物語っている。逆に、エウロパから木星の磁気圏などへの影響も、これまで考えられていたよりもずっと大きいこともわかってきたようだ。