技術試験衛星「きく8号」受信部に異常、地上の小型端末との通信に支障のおそれ

【2007年2月7日 情報通信研究機構

日本の技術試験衛星「きく8号(ETS-VII)」の大型展開アンテナのうち、受信用のものが使えないおそれがでてきた。7日に開催された第5回宇宙開発委員会において、開発機関の1つ情報通信研究機構(NICT)が報告した。


「きく8号」の最大の特徴は、それぞれがテニスコート1面分の面積を持つ2つの大型展開アンテナだ。2つのアンテナはそれぞれ受信用と送信用だが、このうち受信側の装置に問題が発生している。報告によれば、1月30日に地上から受信した信号を増幅する装置に電源を投入した際、異常がみられた。

実際に異常を起こしている部分がどこであるかは依然検討中であるが、最悪の場合受信装置が事実上全損状態であることも考えられるという。そうだとすれば、「きく8号」はこれまでの人工衛星で最大級の「耳」を持っているのに、「鼓膜」が破れているために地上からの電波を聞き取れないことになる。

ただし、大型展開アンテナは地上の小型携帯端末と直接信号をやりとりするためのもの。巨大送信アンテナを備えた基地局との通信用には、別のアンテナが用意されている。また、小型携帯端末も直径70センチメートル程度のアンテナに接続することで、「きく8号」への送信が可能になる。

しかし、「きく8号」は大型アンテナが存在しない山間部や海上、災害発生時の被災地からの高速通信を実現させるための実験が最大の目的だっただけに、小型携帯端末と直接通信できなくなるのだとすれば深刻な問題だ。

なお、送信側の装置には今のところ異常は発生していないとのことである。