土星探査機カッシーニ最新画像:衛星のコントラストに注目

【2007年9月20日 JPL News Releases

土星のまわりは、太陽の光が弱くひじょうに冷たいので、衛星の大半は白い氷でおおわれている。そうした氷衛星の中で、ツートーンに塗り分けられたイアペタスと、太陽系でもっとも白い天体エンケラドスは異質な存在だ。NASAとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の土星探査機カッシーニによる最新画像を紹介しよう。


イアペタス:白黒くっきり、凹凸はっきり

(白い地面に黒い砂?)

白い地面に黒い砂がかかったように見える領域。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(白と黒が混ざった地形)

白と黒とが見事に入り交じった地形。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

(イアペタスの山脈)

イアペタスの赤道を通る山脈。クリックで拡大(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

衛星イアペタスは、土星のまわりを回るときに常に同じ面を進行方向に向けている。そして、進行方向が黒っぽくて反対側が白い奇妙なツートーンの外見をしていることが以前から知られていた。

2004年にカッシーニが土星へ到着してからこれまでに、直径1,468キロメートルのイアペタスには約70万キロメートルまでしか接近したことがなかった。今月10日、カッシーニはイアペタスに1,640キロメートルまで近づき、数多くの画像を撮影した。奇妙な衛星は、拡大するとますます奇妙な姿をしていた。

1枚目と2枚目の画像は、白い半球と黒い半球の境界付近を拡大したもの。1枚目は、注意深く見ると地面そのものは白いことがわかる。白い地面には無数のクレーターがあり、そこに黒い砂が振りかけられたように見える。どのクレーターでも、砂は同じ側にたまっている。このあたりに、イアペタスが白黒に塗り分けられた原因を読み解く鍵があるかもしれない。

2枚目の画像は、もう少し黒い半球に近い部分だ。今度は逆に黒い地面に雪が降り積もったかのように見える。しかし、中央下側では山の尾根が白と黒にまたがって切れ目なく続いているし、白い地面にもクレーターがある。白と黒ははっきり分かれていて、「グレーゾーン」は存在しない。

3枚目の画像は、イアペタスにおけるもう1つの奇妙な特徴をクローズアップしている。赤道に沿って走る高さ10キロメートル、幅20キロメートル、長さ1,300キロメートルの山脈だ。最近発表された研究によれば、この地形はイアペタスが太陽系誕生後すぐに形成され、あっという間に冷えたことと関係しているらしい。イアペタスの歴史の古さを反映してか、無数のクレーターが見られる。

エンケラドス:どの天体よりも白く

(エンケラドスとディオネ)

エンケラドスとディオネ(提供:NASA/JPL/Space Science Institute)

地球の夜空を照らす月は、太陽光の7パーセントしか反射していない。それに対して、氷でできた天体は太陽光の大部分を反射する。土星の衛星のうち4番目に大きいディオネ(直径1,126キロメートル)は、太陽光の実に70パーセントを反射しているという。

ところが手前にエンケラドス(直径505キロメートル)を持ってくると、そのディオネも灰色に見える。エンケラドスの表面は新鮮な氷でおおわれており、太陽光をほぼ100パーセント反射するのだ。

これは7月24日にカッシーニが撮影した画像で、合成されたものではない。エンケラドスから190万キロメートル、ディオネから220万キロメートルの位置で、偶然両者が重なって見えた瞬間をとらえた。