衝突天体パトロール、落下目前の小惑星を発見
【2008年10月7日 NASA NEO Program】
観測史上初めて、地球に衝突する前の小惑星が望遠鏡で発見された。この小惑星2008 TC3は直径が推定約2mで、隕石として地表に到達する前に燃え尽きてしまう程度の大きさだが、アフリカ北東部の国スーダンで、ひじょうに明るい火球として夜空を照らしたとみられる。
小惑星2008 TC3が発見されたのは10月6日午前6時30分前後(世界時、以下同)のことで、月の軌道よりわずか外側の位置を高速で移動していた。見つけたのは米・レモン山の1.5m望遠鏡。地球に接近する小惑星や彗星を捜索するプロジェクト、カタリナ・スカイ・サーベイ(CSS)の観測中のことだった。
数時間のうちに、2008 TC3は地球に衝突する軌道を描いていることが判明。10月7日午前2時45分(日本時間午前11時45分)ごろにスーダン北部上空で大気圏に突入するという予報が発表された。一般に流れ星として観測されるのは砂粒ほどの粒子なので、2008 TC3は大火球になることが期待された。一方、大気圏で燃え尽きてしまう程度の大きさであるため隕石落下の恐れはほとんどなかった。
発見から落下までの時間がわずかだったこと、落下点付近が人口密度のひじょうに低い地域だったことから、2008 TC3の大気圏突入を観測したという公式な発表は今のところない。地球付近における環境などの情報を扱うウェブサイトSpaceWeather.comでは、オランダの気象学者からの話として、落下予想時刻に予想地点付近を飛行していた航空機から短い発光が観測されたことを紹介している。
2008 TC3が大気圏に突入したことは確実である。将来地球に衝突する恐れのある天体を事前に発見すべく、CSSをはじめ世界中で観測プロジェクトが実施されているが、実際に衝突前の天体が見つかった例は今のところ存在しない。2008 TC3の発見は、観測史上に残る出来事となりそうだ。