「かぐや」、月の裏側を年代測定
【2008年11月7日 JAXA】
月周回衛星「かぐや(SELENE)」が月の裏側にある「モスクワの海」を撮影し、年代を調べた。その結果、月の裏側では、一部の領域がマグマの活動によって少なくとも25億年ほど前に形成された可能性が示された。
現在の月では溶岩の噴出などは起きていないが、形成後数十億年は地質活動が続いていたことが、表面の地形が形成された年代を調べるとわかる。月は常に同じ面を地球に向けていて、その表と裏で地形や過去の活動にどのような違いがあるのかは、多くの研究者が関心を寄せるテーマだ。
月の表側では、40億年近く前に形成された場所もあれば、15億年前よりも新しい地形も見つかっている。一方、探査機を飛ばさなければ観測できない裏側では、これまでのところ30億年以上前の地形ばかりが見つかっていた。
月の地形が形成された年代を調べるのによく使われるのが、クレーターを数える方法。例えば、同じ大きさの海があった場合、たくさんのクレーターがある方が古いと言える。当然、小さなクレーターまで数えた方が精度良く推定できるが、ここで活躍したのが、最小で10mの解像度を誇る「かぐや」の地形カメラだ。
月の裏側には「モスクワの海」と呼ばれる直径277kmの海があり、これまでは30数億年前に形成されたと考えられていた。しかし、これまで調べるのが困難だった直径数百m程度のクレーターを数えると、一部の領域では25億年前と、比較的若い数字が算出された。
今回の結果は、「かぐや」の観測テーマでもある「月の起源と進化」を研究する上で重要なものとなりそうだ。
ところで、昨年の12月にはじまった「かぐや」の定常運用は、10月31日に無事完了した。制御用の燃料もじゅうぶんに残された状態で後期運用が始まっている。これから来年の3月ごろまでは、定常運用期間中にデータを集めきれなかった元素分布の観測を中心に、これまでと同じ軌道での観測が続けられる。その後は低空軌道に移るなどしてさまざまな観測を続け、来年の夏ごろに落下させる見通しだ。