約14年ぶりとなる土星の環の消失現象

【2009年6月12日 国立天文台 アストロ・トピックス(478)

国立天文台では、土星の環の消失現象の起こるしくみを紹介するウェブページを開設した。今年は9月4日に約14年ぶりとなる環の消失現象が起こる。残念ながらその頃の土星は、見かけの位置が太陽に近く観察は困難となるが、6月中は環の細い土星を条件よく観察することができる。


アストロ・トピックスより

(土星の環の傾き変化の画像)

撮影者/加藤 保美、撮影日時/2005年2月11日〜2008年10月28日。クリックで拡大(アストロアーツ 土星ギャラリーより)

土星は、小望遠鏡でも見ることができる美しい「環(わ)」を持つ惑星として知られています。環は、その大きさ(幅)にくらべると厚みがとても薄いため、真横から見た場合には望遠鏡を使っても見ることができず、まるで消えてしまったかのようになります。このような現象を「環の消失」と呼びます。

今年の9月4日、約14年ぶりとなる環の消失現象が起こります。残念ながらその頃の土星は、見かけの位置が太陽に近いため観察するのは困難ですが、珍しいこの現象に注目してみましょう。

土星の環は、数多くの氷粒が集まったものだと考えられています。望遠鏡ではっきり見える環の部分の幅は、およそ数万kmにも及びます。これに対して厚みは、せいぜい1kmで、数十m以下とも報告されています。このように環は大変薄いため、地球から見て環を真横から見ることになる前後の数日間は、見ることができなくなります。環が実際になくなるわけではなく、見えない位置関係になるのです。

土星は、自転軸の傾きを同じ方向に向けたまま、太陽のまわりを約30年かけて一周(公転)しています。そのため、地球から見たときの環の傾きは、約15年周期で大きくなったり小さくなったりする変化を繰り返していて、環の消失現象もその周期で起こります。前回環が消失したのは、1995年から1996年にかけてのことです。

国立天文台では、この環の消失現象が起こるしくみを広く理解していただこうと、環の消失現象の解説ページを公開するとともに、動きによってわかりやすく現象を解説するムービーを作成しました。解説ムービーは、解説ページ(ウェブ)からご覧になれますので、ぜひご参照ください。

現在土星は、夕方に南西ないし西の空に見られます。7月になると、西空低くなってしまいだんだんと観察しづらくなります。このため、条件よく観察できる6月のうちに、傾きが小さいために環が細く見える土星の姿を望遠鏡で観察してみてはいかがでしょうか。