オメガ星団の星、むこう1万年分の動きが明らかに

【2010年10月28日 Hubblesite

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が過去2回に分けてとらえた、ケンタウルス座のω(オメガ)星団の画像の分析から、10万個以上もの星の動きが正確に計測された。その計測をもとに、むこう1万年にわたる星の移動のようすを再現する動画が作成された。


((上)HSTによるオメガ星団の中心領域、(下)むこう600年間の星の移動を示した光跡)

(上)HSTの広視野カメラ3(WFC3)がとらえたオメガ星団の中心領域、(下)上の画像中、四角で示された領域を拡大し、同領域に存在する星、およびそれらの星がむこう600年間に移動する光跡を示したイラスト。光跡の点1つ1つが30年に相当。クリックで拡大(提供:Illustration Credit: NASA, ESA, and G. Bacon (STScI)/Science Credit: NASA, ESA, and J. Anderson and R. van der Marel (STScI))

南天のオメガ星団(通称:オメガ・ケンタウリ)は、1000万個ほどの星が集まった球状星団である。約2000年前の古代ローマ時代には単独の星と思われていたため、天文学者プトレマイオスによって恒星カタログに加えられていた。

星団内の星はぎっしりと密集しており、その中心部ともなると、星1つ1つを見分けるには高い分解能が必要とされる。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)なら、比較的短い時間スケールにおける星の動きまでも計測できる。星の動きを正確に知ることができれば、このような星団が初期宇宙でどのように形成されたのかということや、中心に潜むと推測されている太陽質量の1万倍ほどのブラックホールの存在などに関する手がかりも得られるだろう。

宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の研究者Jay Anderson氏とRoeland van der Marel氏は、HSTに搭載されている掃天観測用高性能カメラ「ACS」が2002年と2006年にとらえたオメガ星団の画像を分析し、10万個以上の星の動きを計測した。これほど正確に星の動きが計測された星団はほかにはない。

さらにAnderson氏らは、今後の星の動きを予測する動画を作成した。すると、むこう1万年にわたってすべての星がランダムな方向へと移動するようすが再現された。

Anderson氏は「たった4年という期間に見られるわずかな星の移動を計測するには、高速で高性能なコンピュータ・プログラムが必要です。しかしそれにもまして、星団の星の動きを計測できる能力を備えたHSTのシャープな視野こそ、重要な鍵なのです」と話している。また、van der Marel氏は「HSTなら3〜4年で、地上に設置された望遠鏡が50年かけて観測する以上に、正確に星の動きを検出できるのです」とコメントしている。

なおリリース元では動画を見ることができる(下記リンク先を参照のこと)。