これまででもっとも質量の大きな中性子星を発見
【2010年11月2日 NRAO】
アメリカ科学基金(NSF)のロバート・C・バード・グリーンバンク望遠鏡(GBT)が、これまででもっとも質量の大きな中性子星を発見した。この発見は、素粒子物理から宇宙物理にいたる幅広い範囲の分野に大きな影響を与えることになりそうだ。
中性子星とは、大質量星が超新星として爆発したあとに残る高密度の天体である。その密度はきわめて高く、スプーン1杯あたりの重さは5億トン以上もある。この驚異的な密度を持つ中性子星は、密度の高い特異な状態にある物質を調べる天然の実験室といえる。また、中性子星は高速で自転しており、回転に伴って灯台のように規則正しく明滅する電波のビームが観測され、パルサーと呼ばれる。
今回観測された中性子星「PSR J1614-2230」は1秒間に317回転するパルサーで、白色矮星と連星系を形成している。この場合、中性子星の質量を計測するために、アインシュタインの一般相対性理論によって予測されたある効果を利用することができる。
白色矮星の重力によってその周囲の空間にはゆがみが生じているため、パルサーからの電波ビームが白色矮星のすぐ近くを通り抜ける際、パルスに遅れが生じる。この効果は発見者であるアメリカの天体物理学者アーウィン・シャピロに因んでシャピロ・ディレー(Shapiro delay)と呼ばれており、パルスの遅れから両天体の質量を正確に計測できる。
GBTを使ってPSR J1614-2230を観測した、米国国立電波天文台のScott Ransom氏は「この連星系を調べて幸運だったのは、連星の公転周期が短かった(9日以下)ので軌道を1周する間中ずっとパルスを追いかけることができた点です。また、(地球から見て)軌道面がほぼ真横に向いていたこと、白色矮星の質量がとても大きかったことも幸運でした。このような組み合わせによって、シャピロ・ディレーがひじょうに強くなり、計測を容易にしてくれたのです」と話している。
これまで、PSR J1614-2230の質量は太陽の1.5倍ほどと見られていた。しかし、GBTの観測によって太陽質量の2倍もあることが明らかになった。このような大質量の中性子星の存在は、この種の天体の組成に関する理解を素粒子レベルから変えてしまうものだという。
米国国立電波天文台(NRAO)のPaul Demorest氏は「この中性子星は質量が太陽の2倍もあり、それこそが驚きなのです。この発見によって、中性子星の内部組成に関する従来の理論モデルのいくつかが除外されることになります」と述べ、さらに「また、ひじょうに高密度な状態にあるすべての物質に関する理解や、原子核物理学の分野にも影響を与えます」と述べている。