月に従来の推定の100倍もの水が存在した可能性 アポロのサンプルから判明

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【2011年6月6日 NASA

アポロ17号が持ち帰った月のサンプルを詳細に分析した結果、従来の推定量の100倍もの水が存在していることがわかった。ジャイアントインパクトによって月が形成されるプロセスの考証に影響を与えそうだ。


(アポロ17号が持ち帰ったサンプルの顕微鏡写真)

アポロ17号が持ち帰ったサンプルの顕微鏡写真。球状のものが直径約0.2mmのオレンジ火山ガラス。クリックで拡大(提供:NASA)

(分析を行ったメルト含有物の画像)

分析を行ったメルト含有物の光学画像。金色に見えるのは、観察前の金蒸着処理によるものと思われる。クリックで拡大(提供:NASA)

月の水の存在については、無人探査機のほか、1960〜1970年代の「アポロ計画」で持ち帰った試料や月隕石の試料から様々な研究成果が出ている。

このうち、アポロ17号が1972年に持ち帰った「オレンジ色の火山ガラス」中に火山噴火で形成されたと考えられるメルト含有物が見つかり、その中の水含有量が最新機器で測定された。その結果、月のマグマにはこれまでの推定の100倍近い615〜1410ppmの水が含まれていたことがわかった。これは地球の上部マントルに含まれる水の量と同じくらいである。

また、塩素や硫黄の濃度、主な化学組成も調べたところ、原始地球の海嶺玄武岩とよく似ていることがわかった。

地球の海嶺玄武岩は上部マントルが溶けることによって形成されていると考えられており、今回の結果は形成初期の月と地球が比較的似ていた可能性を示している。

月の成り立ちについては、約45億年前に火星サイズの原始惑星が原始地球に衝突してできたとする「ジャイアントインパクト仮説」が広く支持されている。この「ジャイアントインパクト」によって月が形成されるとき、非常に高温になり水のほとんどは逃げてしまうため、月には形成されたときから水がほとんどないと考えられてきた。

しかし、多量の水が存在していたことを裏付ける今回の結果により、「ジャイアントインパクト仮説」の考証にも見直しが必要となる可能性がある。