連星系で色鮮やかな原始惑星系円盤を発見
【2011年6月8日 すばる望遠鏡】
おうし座の方向にある若い連星の原始惑星系円盤をすばる望遠鏡で観測したところ、南北で違う色で光っていることが確認された。連星系であるためにもう一方の星の光を反射していることが関係していると考えられるが、詳しいことはわかっていない。
宇宙にある恒星は太陽のように単独で存在しているものばかりではなく、2つ以上の星が互いの重力に引かれて連星を形成しているものも半数程度存在していると考えられている。
このような連星系でも太陽系と同じように、形成された最初のころには星の周りに原始惑星系円盤を作っている。今回観測されたおうし座FS星はまさにこのような天体で、30天文単位(1天文単位は地球と太陽の距離を1としたもので約1億5000万km)と2800天文単位離れたところに伴星を持つ3重連星であり、原始惑星系円盤を持っている。
中心星に対して円盤は暗いため、中心星を隠して撮影する「コロナグラフ」と呼ばれる装置を用いて、赤外線の波長でおうし座FS星を観測し、互いに30天文単位離れたFS A連星の周りを取り囲む円盤をとらえることに成功した。この円盤は約630天文単位まで広がっていた。
このような原始惑星系円盤は中心星の光を反射して赤外線や可視光線で光って見えているが、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したおうし座FS A連星の可視光線画像と比較すると、赤外線と可視光線で明るく見える領域が異なっていることがわかった(画像1枚目参照)。
なぜ明るい領域が異なっているのか。はっきりしたことはわかっていないが、その答えのヒントとして2800天文単位も離れているFS B星の存在が挙がっている。光は偏光と呼ばれる現象(光波の振動する方向が偏る現象)を起こすが、その偏光の度合いがFS A星とFS B星で異なっている。可視光線で明るかった領域の外側の光はFS A星の光を反射しているのではなく、遠く離れたFS B星の光を反射しているようだということがわかったのだ(画像2枚目参照)。
しかし、可視光線で明るい領域でも中心星に近いところでは中心星と同じ偏光を示しており、偏光だけでは明るさの違いは上手く説明できていない。明るさが違う理由は未だによくわかっていない。
原始惑星系円盤は惑星が形成されるまさにその現場だが、連星系での惑星についてはまだわからないことも多い。今回のように、これまで見られなかったような原始惑星系円盤も調べることで、恒星の進化や惑星形成のプロセスが解明されていくと期待されている。