分子雲で水の素となる物質「過酸化水素」を発見
【2011年7月13日 ヨーロッパ南天天文台】
ヨーロッパの研究グループがへびつかい座ρ(ロー)星の近くにある分子雲を観測したところ、過酸化水素が存在していることがわかった。この物質は水に変化しやすく、宇宙空間で水を作る「素」のようなものと考えられる。
分子雲はマイナス250℃という非常に低温の水素分子の塊であるが、その中には水素以外の重い物質もわずかに存在している。このため分子雲は、宇宙空間にどのような分子が存在しているのかを確かめるための格好のターゲットとなっている。
ヨーロッパの研究グループはチリのチャナントール台地にあるAPEX望遠鏡を用いてへびつかい座ρ(ロー)星近くの分子雲領域を調べ、過酸化水素が存在していることを発見した。
望遠鏡で過酸化水素がどのように見えるかということは実験室での再現実験で既にわかっていたが、100億個の水素分子に対して過酸化水素分子は1個程度しかないと考えられていたため、観測するのは非常に難しかったのだ。
この過酸化水素(H2O2)は、水(H2O)に酸素原子が1つくっついた形をしている。地球では水とオゾンの生成に関係している重要な分子であり、身近なところでは漂白剤として利用されている分子だ。
過酸化水素は、宇宙空間では塵の表面で酸素分子に水素原子がくっつくことで作られると考えられており、さらに水素がくっつくと水へと変化する。地球の水のほとんども宇宙空間で形成されたと考えられているが、今回の発見は、宇宙空間でどのように水が形成されるかについて理解するために大いに役立つ可能性がある。
また、宇宙空間で酸素分子を見つけるのは非常に難しいことが知られているが、今回の過酸化水素の発見により、酸素分子はそのほとんどが過酸化水素になっているのかもしれないとも考えられそうだ。