「親」に抗う若い星
【2011年12月27日 ヨーロッパ宇宙機関】
ハッブル宇宙望遠鏡によって、巨大な分子雲とその中心にある形成の最終段階である若い星が撮影された。この若い星は太陽の15倍程度の重さを持ち、まもなく主系列星の段階に入ると思われる。
ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている広域観測カメラ3(WFC3)が、はくちょう座の天体Sh 2-106(1950年代に天文学者Steward Sharpless氏によって作られたカタログの106番目、略してS106)を撮影した。数千光年ほど離れたところにあるこの星間雲は、長いところでも2光年ほどしかなく、星形成領域にある雲の中では比較的小さなものである。
この星間雲の中でできたと考えられる若い星S106 IRは、現在ではガスを砂時計型の星間雲に猛烈な勢いで吐き出しており、同時に水素ガスに熱や乱流をもたらす原因となっている。周囲のガスは1万度近くまで加熱され、イオン化した水素が画像中で青く輝いている様子が確認できる。画像中の赤い領域は、比較的低温の厚いチリが存在していると考えられる。
S106 IRの質量は太陽の15倍程度あり、現在は星形成の最終段階にいると考えられる。まもなくすれば、激しくガスを吐き出すようなことはなくなり、落ち着いた主系列星の仲間入りを果たすだろう。