9年目を迎えたオポチュニティと、命運を握る火星の風が織り成す模様
【2012年1月30日 NASA (1)/(2)】
2004年の活動開始から9年目を迎えた火星探査車「オポチュニティ」が5回目の冬を迎えようとしている。探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」による、風が作った地形模様の画像とともに紹介しよう。
火星探査車「オポチュニティ」は2004年1月25日、裏庭ほどの大きさのイーグルクレーターに着陸した。その後、昔の火星が湿潤な環境であった証拠を発見するなど、当初計画されていた活動期間3か月の間に全ての目標を達成した。
さらに4年にわたって、直径800mほどのビクトリアクレーターで調査を行った後、直径約22kmのエンデバークレーターへと移動し、石膏を発見するなど(参照:2011/12/9「水で堆積した火星の石膏」)成果を挙げ続けている。
火星の1年は地球のほぼ2年にあたり、探査を始めて現在9年目に突入したオポチュニティは火星で5度目の冬を迎えようとしている。この冬オポチュニティは、太陽電池パネルが太陽面を向きやすいように斜面の上で時を過ごすことになっている。このようなオポチュニティの運用はこれまで行われていなかったが、オポチュニティの双子にあたる探査車「スピリット」との通信が発電不足のために途絶え、2011年5月に運用終了したことを踏まえての措置だ。冬の間は「グリーリーヘイブン」(注)と呼ばれる露頭にとどまり、2012年中ごろまで調査を続ける予定だ。
冬が終わり、「風」が太陽光パネルの表面を綺麗にしてくれれば、エンデバークレーターの縁で粘土鉱物の探索を行う予定となっている。
そんな火星の「風」が織り成す地形が火星周回衛星から届けられた(画像)。これはNASAの「マーズ・リコナサンス・オービター」(MRO)に搭載されているHiRISEカメラによって撮影されたものだ。
およそ35億年前まで続いていたとされるノアキアン時代にできた衝突クレーターの中に見られるこの地形は、火星表面の浸食や堆積の歴史を表していると考えられる。
HiRISEカメラは1回の観測で、小さな机を見分けられるほどの高解像度で数km四方の領域を撮影する。これまでに撮影された20600枚以上にもなる画像から、火星の過去の環境がどうであったか、風や隕石、季節変動などによって現在どのように変化しているのか、といったことを解明しようとしている。
注:「グリーリーヘイブン」 惑星地質学者Ronald Greeley氏(1939-2011)にちなんで付けられた愛称。氏は火星探査車のチームメンバーであり、他の多くの惑星間探査にも携わっていた。