火星探査車オポチュニティ、エンデバー・クレーターでの調査を開始

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【2011年9月6日 NASA

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が新たな探査地「エンデバー・クレーター」での調査を開始した。最初に調べた岩石の性質が他の場所のものとは異なることが早速判明し、この地での新しい発見に期待が高まる。


「オポチュニティ」が岩石の調査を行っている様子

「オポチュニティ」が岩石「ティスデイル2」の調査を行っている様子。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

エンデバー・クレーター西縁の周辺

「オポチュニティ」が8月9日に撮影したエンデバー・クレーター西縁の周辺地形。「ヨーク岬」と呼ばれる低い尾根状の地形の上に直径20mのオデッセイ・クレーターがあり、その形成時に飛び散った岩石「ティスデイル」が右に見える。手前が「ボタニー湾」と呼ばれる部分。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech)

2004年から探査を続けているNASAの火星探査車「オポチュニティ」は、ほぼ同時期に別の場所に着陸した同型車「スピリット」が通信途絶により今年5月に運用終了した後も、活動を継続中だ。

オポチュニティは2年にわたる調査を行ったビクトリア・クレーターを離れ、次なる目的地エンデバー・クレーターを目指した。そして3年間の移動の末、8月にこの直径22kmほどのクレーターに到着した。

エンデバー・クレーターでの探査を開始したオポチュニティは、手始めとして「ティスデイル2」(注1)と名付けられた30cmほどの岩を分析した。すると、この岩はこれまで見てきた火星上のどの岩石とも異なっていた。一見普通の火山岩と似ているが、亜鉛や臭素の量が多かったのだ。

この新たな分析結果は、これから出てくるエンデバー・クレーターの成果の序章かもしれない。科学者たちは2週間にわたり、オポチュニティに搭載している様々な機器を用いてティスデイル2の分析を行っている。

火星上空を周回する探査機の観測によれば、エンデバー・クレーターのふちに見られる露出した岩盤は、火星のかなり初期のころに形成されたもので、弱酸性の湿った環境下で形成されるような粘土鉱物を含むとみられる。また、不連続な尾根状の箇所は、昔のクレーターの名残だと考えられる。

オポチュニティのいる領域にある尾根上の地形は「ヨーク岬」、そしてクレーター外縁とヨーク岬に挟まれた部分は「ボタニー湾」と名付けられている(注2)。このボタニー湾はこれまでの探査では見られなかったような不規則な露頭が存在し、ヨーク岬には水で運ばれたと思われる物質で溝を埋められた堆積岩のようなものが存在していた。オポチュニティ副主任研究員のRay Arvidson氏らは、まずはヨーク岬にある古い石の調査を行うことを決定した。

オポチュニティは当初の計画を大幅に上回る33.5kmもの距離を既に走っており、いつ大きなトラブルに見舞われてもおかしくないが、何事もなければまだ何年か使える見込みである。

次の火星探査車「キュリオシティ」は2011年11月から12月の間に打ち上げ、2012年8月に火星に到着する予定である。新しい探査車はもちろんだが、オポチュニティもこのエンデバー・クレーターを中心に今後も成果を挙げることが期待されるだろう。

注1:「ティスデイル2」 歌手・女優アシュリー・ティスデイル(Ashley Tisdale)が由来か。曲の1つに「Queen of Mars」がある。

注2:「ボタニー湾」「ヨーク岬」 18世紀の英国人ジェイムズ・クックによるオーストラリア探検に由来すると思われる。その時の船「エンデバー」がクレーターやスペースシャトルの名前のもとにもなっている。

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