火星に液体の水が現存、季節による変化も
【2011年8月9日 NASA / ヨーロッパ宇宙機関】
火星には、現在でも液体の水が存在し、北極の氷が季節ごとに状態変化する様子が見られることが、アメリカとヨーロッパそれぞれの探査機の画像からわかった。固体の水は既に確認されていたが、液体の水の存在を示唆する画像は今回が初めてだ。
NASAの火星探査機「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」が撮影した火星の南半球の中緯度にある崖に、火星の四季における春から秋にかけて液体が流れたような跡が発見された。夏の間に塩水が流れたことで跡ができた可能性がある。
指のような模様が夏の間だけ見え、冬には消えてしまい、春になるとまた見えてくる様子が確認されたことから、温度が高い間だけ何かが流れたのではないかと考えられている(画像1枚目参照)。
水が流れた痕跡の見られた場所における地表付近の温度は、二酸化炭素が溜まるには高すぎ、純粋な水が流れるには低すぎる。一部の火星表面で見られる、塩が溶けた塩水であれば液体として存在できるため、地球の海水のような液体の水が地表面を流れていたのかもしれない。
しかし、探査機による観測では水の存在を捉えることはできていない。液体の水はすぐに蒸発してしまったか、あるいは地下水として流れていると考えられる。
これまで火星表面では、氷の存在や、地質学的に見てごく最近水が流れたような地形は確認されていたが、現在でも液体の水が流れている跡のようなものが発見されたのはこれが初めてである。
一方、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」は、火星の北極で夏の間に氷が表面に露出し、冬には再びドライアイス(二酸化炭素)と氷が表面を覆っている様子を観測した(画像3枚目)。
北極ではドライアイスと氷が表面を白く覆っていることが知られている。夏の季節になるとドライアイスだけが気化してしまうため、残された水が表面に露出しており、その様子が捉えられたものだ。
この表面に露出した氷は時折、大気中に水蒸気を大規模に放出している。秋から冬になると気温が下がり、再びドライアイスと氷が表面を覆うようになる。
マーズ・エクスプレスは今年の8月から9月にかけて、レーダーを用いて北極の氷の3次元マップを作成する予定となっている。この3次元マップによって北極の氷の深さ方向の構造や組成がわかることが期待されている。
今回のNASAやESAの発見は、火星の上で現在も水の循環が行われている可能性を示している。火星は大規模な砂嵐を始め、まだまだ大規模な活動を行っている天体なのかもしれない。