太陽系の遠方にある小天体の連星

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【2012年2月20日 ジェミニ天文台

ジェミニ天文台の観測から、太陽系の果てのカイパーベルト天体「2007 TY430」の連星同士の軌道が、形成から変わっていないことがわかった。この発見はこれらの小天体の形成環境を探るうえで重要な手がかりになりそうだ。


ジェミニ北望遠鏡が撮影した連星系

ジェミニ北望遠鏡が撮影した連星系2007 TY430(画像中央)。クリックで拡大(提供:発表資料より。以下同)

連星系2007 TY430の軌道

連星系2007 TY430の軌道。観測された点を十字や丸で、そこから求められた軌道を滑らかな楕円で示している。クリックで拡大

海王星の外側には、「カイパーベルト天体(KBO)」または「太陽系外縁天体」などと呼ばれる小天体が数多く存在していることが知られている。これらの天体は主に氷でできており、太陽系初期の姿を残していると考えられる。

そのうちの1つが、太陽からおよそ40天文単位(AU)離れた「2007 TY430」だ。すばる望遠鏡によって発見されたこの天体は、お互いを回る2天体から成る連星系である。

Scott Sheppard氏(カーネギー研究所)らのチームは、米・ハワイのジェミニ北望遠鏡を用いてこの天体を1ヶ月おきに観測し、連星系の動きを精密に測定した。その結果、KBOの連星系には珍しく、形成以来お互いの公転運動が変化していないらしいことがわかった。チームでは、この連星系が形成された時にさらにもう1つの天体が絡み、複合的に作用していたと見ている。

それぞれ半径50kmという大きさや、お互いを円軌道で回るという点では普通のKBOと変わらないが、一般的なものより太陽系のやや内側に位置しているため、もともとの軌道から海王星の重力に引かれて今の軌道に落ち着いたのではないかと考えられる。2007 TY430が海王星と3:2の軌道共鳴()の関係にあることもそれを裏付ける。

2007 TY430の2天体間の距離は、42,000kmにもなる。同様の軌道共鳴の関係をもつ連星系で、同等サイズの2天体がこれだけ離れているというのはこれが初めての例だ。お互いが離れた小天体の連星系は重力的に不安定で、ばらばらにならずに残った数少ない例のひとつが2007 TY430なのだろう。

今回の観測ではその他、反射率の測定から、表面に有機物の存在が考えられることもわかった。

この天体は、太陽系初期にどのように小天体が形成されたのか、そのメカニズムや条件に迫るよい手がかりかもしれない。

注:「軌道共鳴」 この場合は、海王星と2007 TY430の公転周期が整数比になっていることを指す。具体的には海王星が太陽の周りを3周する間に、2007 TY430はちょうど2周する。海王星に対する冥王星の軌道も同じ3:2であるため、このような軌道を取る天体を冥王星族(Plutinos)という。