X線天文学の夜明けから50年 「MAXI」が記念の発見
【2012年6月27日 MAXIサイエンスニュース】
6月14日(世界時)、国際宇宙ステーションのX線検出装置「MAXI」がへびつかい座の新しいX線源をとらえた。ちょうど50年前に初めてX線源として見つかった「さそり座X-1」に近い方向で、記念的な発見となる。
国際宇宙ステーション(ISS)に設置された全天X線監視装置「MAXI」が6月14日、へびつかい座方向に新たなX線源を発見した。この天体にまず気づいたのは自動検出ではなく、実は人間による目視だった。MAXIが1日おきにとらえた画像(1枚目)に、特異な赤色に輝く揺らぎのような新星が現れているのが見つかったが、観測条件が悪かったため画像ノイズとの区別が難しく、半日分のデータを溜めてようやく確信を得て速報を行った。MAXIによる9個目の発見となる。
その後アメリカのガンマ線観測衛星「スウィフト」でも追跡観測が行われたほか、可視光でも観測され、青みがかった暗い星(B=20.7等)に同定された。
このX線新星「MAXI J1647-227」から10度ほど離れた位置には、ちょうど50年前の1962年6月18日に世界で初めて発見されたX線源「さそり座X-1」がある。ほとんどX線だけで輝いている天体の発見は、当時天文学者だけでなく世界の科学界に衝撃を与えた。天文学の世界に中性子星やブラックホールが登場し、現代天文学の礎が築かれたのである。
今回のX線新星では中性子星の特徴であるタイプIのX線バースト(爆発的なX線放射)が見つかった。これにより、さそり座X-1と同類の天体であることもわかり、 X線天文学誕生50周年に記念すべき登場となった。
「さそり座X-1」の発見とX線天文学の発展に大きく貢献したリッカルド・ジャッコーニ(Riccardo Giacconi)博士は2002年にノーベル物理学賞を受賞。今年10月にはイタリア・ミラノで、博士が出席する記念シンポジウムの開催が予定されている。