国内初、太陽系外縁天体が星を隠す瞬間をとらえた
【2013年1月21日 せんだい宇宙館】
日本時間9日、冥王星より遠いところを公転している小天体ヴァルナが恒星を隠す恒星食が起こり、滋賀県と広島県で観測に成功した。太陽系外縁天体による恒星食が国内で観測されたのは今回が初めてで、世界的にも12回目という快挙となった。
太陽系外縁天体による恒星食で歴史的な観測成功
1月9日明け方 ヴァルナによる16等星の食
近年の観測技術の発達により、冥王星付近からさらに遠い太陽系の外縁に多数の小天体が発見されるようになってきました。これらは「太陽系外縁天体」と呼ばれています。
太陽系外縁天体ヴァルナ((20000) Varuna)は、2000年11月に発見された冥王星の外側を周回する準惑星候補天体です。太陽系外縁の天体は近年の太陽系の天文学では、太陽系の成因を知るうえでもっとも注目されている分野です。
このような遠方の天体による恒星食を観測することは極めて困難です。あまりにも遠方であるために、予報の精度が低い、予報そのものが少ない、明るい恒星食はまずありえない、等がその理由です。
仏パリ天文台のブルーノ・シカルディ博士(Bruno Sicardy)から、1月9日明け方にヴァルナがふたご座にある15.9等の恒星(3UCAC 233-089504)を隠す星食が起こるという予報とその観測協力の依頼が寄せられました。
日本各地で観測に臨んだうち滋賀県守山市と広島県東広島市の2地点で、食による恒星の減光の観測に午前5時24分ごろ成功しました。国内で太陽系外縁天体の恒星食観測が成功したことは歴史上今回が初めてです。また九州の2地点でも、通過(食が起こらない)との観測結果が得られました。
この観測には、台湾、香港、中国や、掩蔽帯延長上のヨーロッパでも多数の観測が試みられましたが、食の観測に成功したのは日本のサイトのみでした。
東広島天文台の観測画像および動画が、せんだい宇宙館のウェブサイトにも掲載されています。
国内での観測結果は以下の通りです(敬称略)。
- 食の観測に成功
- 井狩康一(滋賀県守山市)
- 伊藤亮介、森谷友由希、上野一誠、河口賢至、植村誠(広島大学東広島天文台:広島県東広島市)
- 国内で通過(食なし)を観測
- 影山和久(熊本県熊本市)
- 宮ノ下亮、安藤和真(鹿児島大学天文台:鹿児島県薩摩川内市)
- 観測映像を解析中
- 石田正行(滋賀県守山市)
星食に関するメーリングリスト「JOIN」などで報告されたこれらの観測成果は、せんだい宇宙館を通じてパリ天文台に報告されており、今後詳しく解析されます。
今回国内で得られた恒星食観測の成功は、太陽系外縁天体によるものとしては冥王星による恒星食を含めて国内初という記念碑的な成果となりました。また世界的に見ても過去に11回(注)しか観測されていません。
今回の星食の観測成果から、ヴァルナの大きさや形状、大気の組成に関する情報まで得られることが期待されます。
注:星食観測例 シカルディ博士による調査。冥王星と衛星カロンによるものをのぞく。