10日に準惑星候補天体ヴァルナによる恒星食 仏から観測呼びかけ
【2011年2月1日 せんだい宇宙館】
2月10日の夜、太陽系外縁天体「ヴァルナ」による恒星食が日本で観測できるかもしれない。本格的な望遠鏡が必要だが、恒星食は天体を知る貴重な手がかりでもあり、フランスの研究者からも観測協力が呼びかけられている。
文:せんだい宇宙館 早水勉さん
高速に自転する準惑星候補天体「(20000)Varuna」による15.3等星の食の観測にご協力お願いいたします。
2月10日午後9時36分(日本時間)に観測される可能性があるこの現象について、Bruno Sicardy博士(パリ天文台)より、日本での観測の協力依頼を受け取りました。Sicardy博士は、昨年11月の準惑星エリスによる恒星食に成功したチームのメンバーとしても知られています(下記〈関連ニュース〉参照)。
国内向けの詳細観測情報をせんだい宇宙館のウェブサイトに掲載しましたのでご覧ください。
海王星以遠に存在する多数の天体は「太陽系外縁天体(TNO=Trans-Neptunian Opject)」と呼ばれます。TNO天体は近年の観測技術の進歩により多数発見されており、太陽系の起源を研究する上で極めて重要です。
このヴァルナ((20000)Varuna) は、エリス、ハウメア、マケマケ等と同等の直径約1000kmの大きさを持つと考えられており、準惑星の候補天体です。また、光度曲線の観測から高速で自転することがわかっており、かなりつぶれた楕円形状を持つと推測されています。TNO天体は極めて遠方に存在するため、予報の精度を確保することが困難で、また動きが遅いために恒星食の観測そのものが滅多に得られません。今回の恒星食は、日本国内でTNO天体による恒星食が観測される絶好の機会です。
ただし対象星が 15.3等 と極めて微光であるために大口径の望遠鏡が必須となります。 Sicardy氏によると、30〜50cm口径の望遠鏡であれば、1〜2秒の露出(蓄積)で撮影できるだろうとされます。また、現状では±1500kmの誤差を含んでおり掩蔽を起こさない可能性もあります。
現在までに発表されている、Sicardy氏による予報を以下に示します。
Bruno Sicardy博士(パリ天文台)による予報(2月1日現在)
- 食の起こる可能性がある地域と予報の誤差
- 名目上の掩蔽帯は北海道を通過していますが、+/-1500km程度の誤差(1σ)が推定され日本全国が対象地域です
- 現象時刻の予報の誤差(1σ)は、70秒程(正式には問合せ中)です
- TNO天体((20000)Varuna)の情報
- 推定直径は1000kmだが、高速の自転によりかなりつぶれた楕円形状である
- 2010年2月19日にブラジルで食と通過の観測が各1地点で得られており、つよい楕円形状を示唆している
※この予報は今後も改良される予定です。最新の情報は下記〈参照〉の「Bruno Sicardy博士による予報」をご覧ください。