40億年前の月の自転軸は数十度ずれていた

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【2014年5月8日 東京工業大学

探査機「かぐや」などの観測から、太古の月は現在の地球と同じように大規模な磁場があり、また現在とは数十度異なる自転軸を持っていたことが明らかになった。月の形成と進化を明らかにするうえで重要な成果となる。


月の磁極の変化

月探査機のデータから導かれた磁極の位置は、現在の極付近(図中P1)と中緯度付近(P2)に集中。極が数十度移動した過去がうかがえる。クリックで拡大(提供:発表資料より)

常に同じ面を見せる月

自転と公転の周期が一致する月は、常にほぼ同じ面を地球に向けている。かつて異なる自転軸を持っていたとすれば、現在とは違う面を見せていたことになる(「ステラナビゲータ」でシミュレーション作成。以下同)

5月中旬に見える月

5月中旬、月は火星や土星、スピカと接近し、15日未明に満月となる。クリックで拡大

地球上どこにいても磁石のN極が北を指し示すのは、地球に磁場があるからだ。地球の磁場は、高温で溶けた鉄の中心核が流動することによる電磁誘導現象で生じ、維持されている(ダイナモ作用)。

月は地球のような大規模な磁場を持たないが、その岩石サンプルの分析から、約40億年前には磁場が存在していた可能性があるとされる。

過去の月の磁場をさらに知る手がかりとなるのは、現在観測される局所的に磁場の強い地域(磁気異常)だ。九州大学と東京工業大学の研究チームでは、日本の月探査機「かぐや」とアメリカの「ルナプロスペクター」で得られた大量の磁気異常データから、過去の磁極の位置を推定した。

その結果、現在の極付近のほかに、中緯度付近に集中した磁極群も見つかった(画像1枚目)。磁極の位置は自転軸の極とほぼ一致する性質があるので、かつて月の自転軸は現在の位置から数十度ずれていたことになる。

過去の月に大規模磁場が存在していたということは、月にじゅうぶんな大きさの中心核があることを示す。また、月の向きが変わるという重大イベントが明らかになったことで、従来は現在の自転軸を暗に前提としていた月形成進化モデルの新たな構築が期待される。

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