火星で棲息できる地球上生物、メタン菌
【2014年5月22日 University of Arkansas】
米研究チームの実験により、地球上でもっとも単純な最古の生物であるメタン菌が、火星上で棲息できる可能性が示唆された。
メタン菌は水素をエネルギー源に、二酸化炭素を炭素源にして代謝を行いメタン(天然ガス)を生成する微生物だ。メタン菌は嫌気性のため酸素を必要とせず、さらに有機的な栄養素も不要で、光合成も行わない。こうした特徴から、火星に生物がいるとすればその理想的な候補とされている。
米・アーカンソー大学Rebecca Mickolさんは、2種類のメタン菌を火星の環境と同じ条件にさらすという実験を行った。その結果、メタノサーモバクター・ウォルフェイイおよびメタノバクテリウム・フォルミシカムと呼ばれる両種が凍結・融解サイクル実験で生き残った。
「火星の温度は、摂氏マイナス90度からプラス27度と幅広く変化します。もしも現在、火星に何らかの生物が存在していれば、少なくともこの温度の範囲内で生きられなくてはなりません。長期的な凍結・融解サイクルにさらされても、これら2種類のメタン菌が生き残ったという結果は、メタン菌が火星の地表下の土壌でも生息できる可能性を示唆しています」(Mickolさん)
共同研究者のTimothy Kralさんは1990年代からメタン菌を研究し、火星上で細菌が生きられるかどうかを調べてきた。そして、2004年に火星の大気中にメタンが発見され、その供給源が何であるかが大きな疑問としてあげられるようになった。「火星にメタンが発見されたとき、わたしたちは、本当に興奮しました。人々がメタンの供給源は何かと疑問を持つようになったからです。その可能性の1つが、メタン菌かもしれないのです」(Kralさん)
その後2013年には、探査車「キュリオシティ」の調査で検出可能な量のメタンは存在しないという結果が出た。だが、火星の環境で生きられるメタン菌の存在が判明したことで、今後の研究の方向性に何らかの示唆をもたらす可能性がある。