56億年前に変容した銀河中心ブラックホールの活動

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【2014年6月10日 NASA

活動的な銀河中心のブラックホールから強い放射が見られる「ブレーザー」。その2つのタイプの時代分布から、時とともに一方からもう一方へと変化したものであることがわかった。


活動銀河核のブラックホール

活動銀河核のブラックホールのようす(CG図)。重力で集まった物質が渦巻く円盤と、両極方向のジェットも見える。クリックで動画ページへ(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

多くの銀河の中心には太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ巨大質量ブラックホールが存在する。銀河中心(銀河核)にガスが豊富にあれば、ブラックホールはその物質をどんどん飲み込んで明るく輝く。周囲には重力で引き込まれるガスが渦巻く円盤(降着円盤)が作られ、ブラックホール近辺からは両極方向に光速に近いスピードでジェットが噴き出す。

こうした活動銀河核の中でも特に高エネルギーなのが「ブレーザー」だ。円盤がたまたま地球正面を向いていて、ジェットがほぼ地球方向に噴き出すためにガンマ線から電波まであらゆる波長でひじょうに明るく見える天体である。ブレーザーには、電波スペクトルが均一に観測される「FSRQ」(flat-spectrum radio quasar:均一スペクトル電波クエーサー)と可視光線での変動が見られる「とかげ座BL型天体」の2種類がある。前者は降着円盤が明るく輝き、ブラックホールの質量は小さい。後者は重いブラックホールから明るいジェットが噴き出し、円盤からの放射はほとんど見られない。

米・クレムゾン大学のMarco Ajelloさんらは数年間にわたって国内外の地上望遠鏡で可視光分光観測を行い、200個以上のとかげ座BL型天体の距離を測定した。天体の距離がわかれば、宇宙の歴史の中でいつの時代のものかがわかる。FSRQのデータとあわせて時代分布を調べたところ、56億年前ごろからFSRQの数が減り、とかげ座BL型天体は増えていったことがわかった。研究チームではこれを、以下のようなブラックホールのエネルギー放出の変容によるものと見ている。

小さい銀河同士がひんぱんに衝突し大きな銀河へと成長していった時代には、衝突のはずみでガスが銀河中心部に流れこみやすくなっていた。そのために、ガスの降着円盤が明るく輝くFSRQが多かった。ガスを取り込むブラックホールは自転が速まり、質量が大きくなる。

その後、銀河同士の衝突が少なくなり、ガスの供給は減る。だがブラックホールに蓄えられたエネルギーがパワフルなジェットを生み出し、とかげ座BL型天体として観測される。

とかげ座BL天体のブラックホールは時とともにエネルギーを失って自転も遅くなり、やがて暗くなっていくはずだ。研究チームでは今後、より多くのブレーザーの観測データを調べてこのプロセスを確かめたいとしている。