月のマントル最深部に温かく軟らかい層

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【2014年7月29日 国立天文台

地球の引力による月の変形にもとづく理論計算から、月の内部深くに軟らかい層が存在し、さらにその中で効率的に熱が発生していることが明らかになった。地球と月が生まれてから今まで、お互いにどのように影響を及ぼしながら進化してきたのかを考え直すきっかけとなるかもしれない。


地球の引力による月の変形の模式図

地球の引力による月の変形の模式図。クリックで拡大(提供:国立天文台。以下同)

月の内部構造

今回の研究成果にもとづいて描かれた月の内部構造。クリックで拡大

月の引力で地球の海が満ち引きするように、月も地球の引力で変形する。この変形する度合いから、天体の内部構造や硬さなどを探ることができる。

月は大まかに、金属の中心核と岩石でできたマントル部に分かれていると考えられるが、日本の月探査機「かぐや」などの観測データから精密に求められた月の変形は、こうした内部構造だけでは説明できなかった。

中国地質大学の原田雄司さんらの国際共同研究チームでは、アポロ計画で設置された月面地震計のデータも考慮しながら、どのような内部構造であれば観測されるような変形が生じるのかを理論的に計算した。その結果、月のマントルの最下部に軟らかい層が存在すると仮定すれば、観測される月の変形をうまく説明できることがわかった。過去の研究でも可能性が指摘されていたことだが、観測結果と理論計算から証明されたのは今回が初めてだ。

研究ではさらに、この軟らかい層の中では潮汐力によって熱が効率的に生じ、現在でも核を温め続けているらしいこともわかった。

研究では今後、発熱のメカニズムや内部構造をさらに詳しく調べ、「月のマントルの底の軟らかい状態がどのように長期間維持されるのか」「軟らかい層での潮汐のエネルギーから熱のエネルギーへの変化が、月の冷え方や地球に対する動き方などにどのように影響してきたのか」といった新たな疑問について明らかにしていきたいという。

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