大量に見つかった原始銀河団の候補

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赤外線天文衛星「ハーシェル」と宇宙背景放射観測衛星「プランク」による観測から、私たちが今日目にしている巨大銀河団の前身と言えそうな原始銀河団の候補が200個以上も発見された。

【2015年4月3日 ヨーロッパ宇宙機関

ビッグバンから138億年経った現在の宇宙では、大半の銀河は数百、数千個の集団で存在している。宇宙がまだずっと若かったころ、こうした銀河団のような巨大な構造はどのようにして作られ、進化してきたのだろうか。

欧州の赤外線天文衛星「ハーシェル」と宇宙背景放射観測衛星「プランク」の観測によって、宇宙が30億歳だったころの天体が複数発見された。これらは、私たちの銀河の近傍にある、つまり現代に近い銀河団の、前身と言えそうな天体だ。

プランクによるサブミリ波全天マップ(中央)と、見つかった原始銀河団候補(周囲)
プランクによるサブミリ波全天マップ(中央)と、見つかった原始銀河団候補(周囲)。輪郭線は銀河密度を示す。クリックで拡大(提供:ESA and the Planck Collaboration/ H. Dole, D. Guery & G. Hurier,IAS/University Paris-Sud/CNRS/CNES)

プランクは遠赤外線や電波までの9種の波長で全天を観測し、天の川銀河や他の銀河からの放射を調べた。これらはビッグバンの痕跡である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測の際にノイズとなるもので、プランクの本来の目的からすると「差し引く」べきデータだが、その中から初期宇宙のものとみられる234の天体が見つかった。

ハーシェルが遠赤外線からサブミリ波の範囲でさらに詳しく観測したところ、これらの天体のほとんどは、初期宇宙の若い銀河の集まりとみられるものだった。それぞれの銀河では、ガスや塵を材料として1年間に太陽の数百~1500個分に相当する星々が生み出されている。私たちの天の川銀河で1年間に新たに生まれる星が太陽1個分なのと比べると、驚異的なペースだ。

発見された天体の多くはまだ年齢と光度が決定されていないが、現在の宇宙にある成熟した銀河団の前身、「原始銀河団」の最有力候補と言えるだろう。