100億年前の宇宙に発見、突然星を作らなくなった「マエストロ」銀河

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すばる望遠鏡による大規模な輝線銀河の探査から、100億年前の宇宙に「星の生成が止まりつつある」大質量銀河が発見された。多数の超新星爆発によって起こる銀河風が原因で星生成が止まることを示唆する結果で、銀河進化の全体像を理解するうえで大きな成果だ。

【2015年9月10日 愛媛大学 宇宙進化研究センター

多くの楕円銀河や天の川銀河のような大型の渦巻銀河など大質量銀河では、100億年以上前に誕生した古い星々が大半を占めている。宇宙年齢が30億歳の頃までは銀河で活発な星生成が行われていたことが観測から明らかになっており、大質量銀河もそうであると考えられるが、約100億年前に突然星を作らなくなったようなのだ。この「星生成抑制問題」を解決するには、星を作るのを「止めつつある」銀河を見つけ、何が起こっているか明らかにする必要がある。

愛媛大学の研究者を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡を用いた撮像サーベイ観測で銀河の探査を行ってきた。多数のフィルターを用いた、奥行き方向16億光年にもわたる広範囲の探査の結果、不思議な性質を示す銀河が見つかった。

研究チームが「マエストロ銀河」と名付けた6個の大質量銀河には、ライマンα輝線が異常に強いという特徴がある。ライマンα輝線は銀河で作られた大質量星からの紫外線で電離した水素ガスが放つスペクトル線だが、マエストロ銀河は比較的古い年齢の星の割合が高く大質量星が少ないという、矛盾した性質が見られる。

マエストロ銀河
星生成を止めつつある「マエストロ銀河(MAESTLO; MAssive Extremely STrong Lyman α Object)」の例。青は電離ガス(ライマンα輝線)、緑は若い星、赤は古い星からの光を表す。図中の横棒は10万光年(提供:愛媛大学、以下同)

この性質は、マエストロ銀河が「活発な星生成が止まった直後」か「星生成は続いているが、星生成率が急激に減少している最中」である可能性を示唆している。その期間は数千万年程度とみられ、銀河の歴史においては一瞬ともいえる短いフェーズをとらえた非常に重要な発見だ。

マエストロ銀河では星生成が終わりかけているということは、それまでに誕生した多数の大質量星が既に超新星爆発を起こしたと考えられる。多数の超新星爆発によって、銀河本体から風が吹き出すように逃げる「スーパーウインド(銀河風)」と呼ばれる現象が起こり、銀河中のガスが外に押し出される。この衝撃で水素ガスが電離され強いライマンα輝線が放射され、一方で星の材料となるガスが失われ星生成が止まると考えれば、矛盾したように見える性質もうまく説明できる。この解釈は、ライマンα輝線がマエストロ銀河を取り巻くように拡がっているという観測結果とも一致する。

星生成銀河からマエストロ銀河を経てパッシブ銀河へ進化する様子
星生成銀河からマエストロ銀河を経てパッシブ銀河(星生成をしていない銀河)へ進化する様子

今回の観測研究から、大質量銀河は生まれてから10億年ほど活発な星生成を行い、誕生した大質量星が寿命を迎えると超新星爆発で銀河風が発生しガスが銀河外に噴出されて星生成が止まる(マエストロ銀河)、その後には小質量の星が残り現在の宇宙で観測される楕円銀河などになる、という進化の描像が見えてきた。

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