2つの輝線で探る宇宙の過去 銀河の星生成は減少傾向に
【2012年4月2日 国立天文台】
日本のすばる望遠鏡とイギリスの赤外線望遠鏡の連携観測で、およそ90億年前の古代宇宙に存在した星生成銀河が数多く発見された。従来の研究成果とあわせると、銀河における星生成活動は過去110億年で継続的に減少傾向であることがわかった。
私たちが住んでいる銀河系(天の川銀河)がどのようにして作られ、現在の姿に至ったのかを知るためには、他の銀河を詳しく調べる必要がある。また、遠くからやってきた光が伝える宇宙の姿は昔の宇宙の姿であるため、異なる時代の宇宙にある銀河を調べることで銀河の誕生や進化についての手がかりを得ることもできる。
しかし、このようなはるか彼方の銀河はそれだけ観測が難しく、「銀河が一番多く星を生み出すのはどの時期なのか」や「どのような物理過程で銀河の星が生まれるのか」といった重要な疑問には、まだじゅうぶんな答えが得られていない。
デイビッド・ソブラルさん(オランダ・ライデン天文台/英エジンバラ王立天文台)らの研究チームは、すばる望遠鏡で水素原子が発する輝線(原子や分子から放射される特定の波長の光)を、イギリス赤外線望遠鏡(UKIRT)で酸素原子の輝線を広範囲で観測した。この手法を用いると、1種類の輝線だけでは見逃してしまう、あるいは明確でなかった銀河の存在や性質を、「俯瞰図」として浮かび上がらせることができる。「片側のイヤホンだけでは聞き逃してしまうボーカルや楽器の音がありますが、両耳にイヤホンを付けることで初めて音の全体像をつかむことができるのです」(ソブラルさん)。
この観測の結果、水素と酸素の両方で輝線が見られる190個の遠方銀河を発見し、およそ90億年前の宇宙ではどれほどの星生成が起こっていたのかを見積もった。そして他の研究成果とあわせて、銀河における星生成活動は過去の110億年で持続的に減少傾向であることが確認された(画像2枚目)。