115億光年彼方、原始グレートウォール内部に巨大銀河誕生の現場

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アルマ望遠鏡による観測で、115億光年彼方に位置する原始グレートウォールの中心に、爆発的に星形成を行っているモンスター銀河の集団が見つかった。モンスター銀河の形成場所や進化の過程の解明につながると期待される。

【2015年12月10日 東京大学

現在から数十億年から100億年以上前の初期宇宙には、天の川銀河の数百倍以上もの勢いで星を生み出している「モンスター銀河」が見つかっている。こうした銀河は近くの宇宙に存在する巨大銀河の昔の姿と考えられ、銀河形成の歴史を調べるうえで重要な天体だ。また、モンスター銀河はダークマターの密度が高い場所で誕生すると予想されており、その検証には誕生現場を観測でとらえることが必要となる。

東京大学大学院理学系研究科の梅畑豪紀さん、田村陽一さん、河野孝太郎さんたちの国際研究チームは南米チリのアルマ電波望遠鏡を用いて、みずがめ座の方向115億光年彼方のSSA22という領域にモンスター銀河を探した。この方向には過去にすばる望遠鏡などの観測で若い銀河の大集団が見つかっており、「原始グレートウォール」というフィラメント状の立体構造をしていると考えられている。

モンスター銀河は大量の塵に覆われており可視光線では観測が難しいが、サブミリ波という波長で電波観測すると塵からの放射がとらえられる。チリのアステ望遠鏡による電波観測でもモンスター銀河の兆候は見られていたが、解像度や感度がじゅうぶんではなく詳しいことは不明だった。

アステ望遠鏡、アルマ望遠鏡、すばる望遠鏡で観測したモンスター銀河の例
モンスター銀河の例。(左)アステ望遠鏡、(中)アルマ望遠鏡、(右)すばる望遠鏡による。サブミリ波ではとらえられているが可視光線では見えないか非常に暗いことがわかり、アステでは広がった像だがアルマでは3個の銀河が分離してとらえられている(出典:プレスリリースより)

今回のアルマ望遠鏡の観測では従来の60倍の解像度と10倍の感度が達成され、原始グレートウォール内に9個のモンスター銀河が集まって存在していること、それらが原始グレートウォール内のフィラメントが集まる中心部にあることが明らかになった。

原始グレートウォールとモンスター銀河の想像図
原始グレートウォールとモンスター銀河の想像図。約5億光年にわたって若い銀河がフィラメント状に分布した大集団「原始グレートウォール」の中心部で、モンスター銀河がいくつも誕生していると考えられる(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NAOJ, H. Umehata)

今回の研究で、ダークマター密度が高い原始グレートウォールの中心部でモンスター銀河が群れて誕生するという理論が観測的にも裏付けられた。また、モンスター銀河の発見を手がかりとして遠方宇宙での原始グレートウォール探索ができる可能性も示すものとなった。研究チームではアルマ望遠鏡やすばる望遠鏡を用いて、モンスター銀河と原始グレートウォールの関係をより詳しく調べていく予定だという。