新機能のオートストレッチで
天体写真のカラーバランスを整える

カラー合成の前にやっておくべきこと「ノーマライズコンポジット」

これらの問題をオートストレッチでどのように解決していくかを解説する前に、ひとつだけやっておくべきことがあります。RGBの各画像は、通常何枚かの画像をコンポジットしてS/Nを上げるのが普通です。これらは同じ露出時間で撮影されますが、これを無造作にコンポジットすると、S/Nを下げる原因になるので注意が必要です。撮影された各画像は、たとえ一晩のうちに撮られたものだとしても、撮影条件の変化によってその明るさは変化しています。コンポジットする前に、最小値と最大値を揃えて同じ明るさの画像にしておく必要があるのです。この操作を「ノーマライズ」と言います。ノーマライズの方法はたくさんあって、最小・最大値を合わせるのはその中の一つの方法です。ノーマライズとは「同じルールを適用してデータを揃えて扱いやすくすること」です。

さて、コンポジットを行うとなぜS/Nが上がるのかといえば、S(信号)とN(ノイズ)の差が大きくなるからです。各画像に含まれている共通部分はそのまま残り、ランダムに現れるノイズは薄まってS/Nが上がります。コンポジットを加算や加算平均のアルゴリズムによって行っている場合はほとんど問題になりませんが、中央値(メディアン)やシグマクリップ、比較明、比較暗などを使うと、ノーマライズをした場合に比べS/Nの劣化が顕著になります(下の画像参照)。

ノーマライズコンポジットの効果

各コンポジットアルゴリズムによってノーマライズ処理がS/Nにどんな影響を及ぼすのかを比べました。参考画像の右にある縦線は静止衛星の軌跡ですが、そもそもノーマライズを行わないと中央値(メディアン)や比較暗などのアルゴリズムを使ってもそれが消えていないことがわかります。アルゴリズムによってはノーマライズが必須という意味がよくわかると思います。

ノーマライズコンポジット各合成モードにおけるSN比較

せっかく精魂込めて撮影した画像なのに、コンポジットで大きくS/Nを下げていたとしたら、とてももったいないので、コンポジットする前に、最小と最大値が同じ値になるようにヒストグラムの幅を揃えて、画像のレンジを合わせてください。とくに、複数夜にわたって撮影した場合は、必ず画像が明るかったり暗かったりしています。手間がかかる部分ですが、ここに注意をはらうことで、大きくS/Nが改善する可能性があります。これはL画像など、全てのコンポジットで同様なので、ぜひご自身の処理プロセスの中に加えていただければと思います。