新機能のオートストレッチで
天体写真のカラーバランスを整える

美しい天体写真とは

さて最後に、僕が思う「美しい天体写真」への思いを書いてみたいと思います。まず当たりまえのことですが、ひどい天体写真をめざしている人はいません。誰もが美しいと思える天体写真をめざしているはずです。しかし現実には、なかなか美しくなってくれない。

「自分にはその感性がないので……」といって謙遜される方がいらっしゃいますが、そんなことはありません。だって、これでは良くないという判断ができるわけですから。だからまず自分の感じたことに自信を持つことですね。

美しいという判断基準は、人それぞれだという意見もありますが、僕はそうは思いません。

美しいと感じる心は人類共通のものだと思っています。それに近づく一番の近道は、やはり科学的根拠を使うことです。ロジックに裏付けられた安定した処理が必要です。今回の「オートストレッチ」もそのひとつだと思います。そしてその上に、薄皮程度に自分の感性(考え方)を付け加えるのがよいと思います。特に色に関しては。

そして色の話からは外れますが、僕は輝度感がとても大切だと感じています。最近、HDR写真というのをよく見かけるようになりましたが、天体写真は通常の風景以上に輝度差が激しいものです。だって、太陽のような恒星と真の暗闇がフレームの中に同居してるのですから。だからどうしても階調の圧縮をしなければならなくなります。これはHDRと同じ考え方ですね。しかし、やりすぎると輝度感の無いのっぺりとした写真になりかねないということに注意しなければなりません。明るいものは眩しくあるべきで、輝きが必要なのです。そのあたりに気をつけて僕はいつも処理をするように心がけています。全てのディテールを出すことにこだわらなければ、トーンカーブひとつで見違えるような写真になる場合があります。ぜひ試してみてください。

最後に、天体写真はまだまだ改善されていく余地があると思っています。 既成概念にとらわれず、ロジックと感性の両面から美しい天体写真にチャレンジしていきましょう。