オートストレッチの応用例
まず、デジタル一眼レフカメラによって撮影された画像を処理する場合ですが、オートストレッチのフィルター係数に(1:1:1)を入れて使うと、フィルター係数の掛け算がキャンセルされますので、純粋にノーマライズの処理のみを使うことができます。フィルター係数(1:1:1)でもバックグラウンド補正は働きますのでバックグラウンドを黒くできます。
このようにフィルター係数を作用させない使い方は、デジタル一眼レフで撮影した画像処理に向くのではないでしょうか。デジタル一眼レフで撮影した画像は、カメラメーカーの優秀なカラーバランス処理のおかげで、正しいカラーバランスになっているケースが多いと思います。ただ、光害の緑カブリなどで背景に色が付く場合は、このような方法でオートストレッチを使えば、カメラが作ったカラーバランスはそのままに、背景を正確に黒に落とすことができます。それによって全体の色純度が増すと思います。もちろんこの方法は、赤外カットフィルターを外すなどの改造をしたカメラではうまくいきません。
次に、Hα画像のノーマライズを考えてみましょう。水素原子の発する赤い散光星雲のディテールアップのために、Hα輝線による撮影を行うことが多いと思います。
問題はこのHα画像を画像処理プロセスの中でどのように使うかです。LRGB合成のL画像をHα画像で置き換えて使う場合、大きな問題点があります。それはRGB画像の星の大きさに比べHα画像の星はかなり小さくなるという点です。確かに強いディテールアップの効果はありますが、これでは作品の質を落としてしまいます。
そのため僕は、R画像にHα画像を比較明合成して使うことが多いです。その時に大切になるのが、R画像とHα画像がノーマライズされて輝度値が合っていることです。僕はこのノーマライズの処理にオートストレッチを使っています。
もともと僕が開発した「AutoStretch」では、オプションでHαスイッチがあり、これをONにしておくと、Hα画像にはRのフィルター係数を作用させるようになっていました。今回の「ステライメージ」への実装では仕様上、その機能がありませんが、たとえばGチャンネルにHα画像を入れて、フィルター係数(1:1:1)でオートストレッチすれば、同じ効果が得られます。その後チャンネルを別々に取り出して比較明合成すればOKです。ちなみに、それでもRGB画像の方が星が大きい場合は、ステライメージのスターシャープフィルターをRGB画像のみにかけることで問題を回避できます。