手動による微調整
このようにして導き出したフィルター係数は、そのままではまだ正確とはいえません。実際に画像処理をしながら正しい値に追い込んでいく必要があります。しかしそのブレの幅はわずかで、おそらく赤がほんの少し紫になるとか、そういう程度の問題だと思います。どんな色が正しいのかと迷った場合、インターネットを活用して他の方の作品を見るのも参考になりますね。そしてある対象で納得のいく値が得られたら、他の対象にも同じフィルター係数を使って補正をかけてみます。それでも良い結果が得られればそのフィルター係数はかなり信憑性の高いものになります。こうしてたくさんの対象に対してこの作業を繰り返すことで、おのずと正解が導き出されます。
しかしここで覚えておいてほしいのは、この追い込みにも限界があるということです。フィルター係数をいくら調整しても補正できない場合があります。なぜならフィルター係数(露出倍数)は、分光透過率特性のカーブに対してその高さを変えているだけなので、ピーク波長の位置や、そのカーブの形状に問題があった場合は、補正することはできないのです。ちなみにどんな不具合が起こるかというと、ピーク波長のずれは色相のシフトとなって現れ、カーブの重なり具合は、微妙な中間色が描写されないという問題を起こします。でもご安心ください。天体写真用に市販されているフィルターはそのあたりの問題が起こらないように設計されているはずです。よほどのことがないかぎり、ここまでの工程でOKとなる場合が多いと思います。
しかしもっと突き詰めたい方、実はこの分光透過率特性の補正手段が「ステライメージ」には用意されています。「マトリックス色彩調整」です。その名のとおり、変換マトリックスを与えて色調を補正する機能ですが、RGBごとに分光透過率特性のカーブのピーク位置や形状をコントロールすることができます。しかしこの補正マトリックスを手動で設定するのはかなり難しく、将来的にはこのあたりが解決されて、「オートストレッチ」と「マトリックス色彩調整」が合体したようなカラー補正プロセスに発展したらおもしろいと思っています。