今回の月食を見るには、特別な準備は何もいりません。晴れていれば、南東の空が見えるところなら自宅やオフィスからでも、早起きも夜ふかしもせず気軽に眺めることができます。月が欠け赤く染まっていくようすも、ふだんの月と同じように肉眼で見られます。
月食は、始めから終わりまで3時間以上の長丁場。秒単位の瞬間的な見どころはないので、ときどき見て確かめるだけでも見ごたえがあります。
その中でもとくに注目したいハイライトが、月が赤く染まっていくところ。月の大部分が欠けてくると、影になったはずの部分が赤みを帯び、やがて全体が赤銅色に染まった月が姿を現します。刻一刻と進んでいく色の変化はとても神秘的。皆既食が始まる時刻は夜7時24分なので、7時ごろから20〜30分かけてじっくりと見届けましょう。
地球の大気の状態などにより月食ごとの明るさや色も微妙に違うので、スケッチやメモで記録を残しておくとよい記念になります。
月食は特別なイベント。でももし外に出かけて見るなら、いつもの夜と同じようにじゅうぶん注意しましょう。つい空に見とれてしまいがちですが、まわりに目を配ることを忘れずに。
天文台や科学館などで行われている観望会では、解説をしてもらいながら観察したり、天体望遠鏡で月を詳しく見たりできます。
もし残念ながら当日曇ってしまったり、外に出られなかったりして見られない時は、インターネットのウェブ中継をチェックしてみましょう。夜7時のテレビニュースでも月食のようすが紹介されるかもしれません。
もちろん、中継をかたわらに実際の空を眺めるというスタイルもあり。月食は世界中どこで見ても同時進行ということがよくわかります。
より月食が楽しめるアイテム。もし持っていれば準備しておきましょう。市販の三脚に取り付ければ手ぶれを気にせずに観察できます。
月食を見るついでに、秋の星空をじっくり眺めてみませんか? とくに皆既食の間は空が暗くなり、まわりの星々が見えやすくなります。肉眼で簡単に見ることのできる見どころをいくつか紹介します(番号は右の図と対応)。
肉眼で簡単に見ることができる最も遠い惑星が土星。そのさらに彼方にあるのが天王星です。空の暗い場所で肉眼で見えるかどうかというくらいの明るさ(等級でいうと5.7等)なので、慣れていないとなかなか見ることのない星です。
今回の月食中には、月のすぐそばに天王星があります。もし天体望遠鏡や双眼鏡を持っていれば、皆既中の月をたよりにして目にするまたとない機会です。見る場所によって位置関係が異なるので、「ステラナビゲータ」などで月の大きさと離れぐあいを確かめておきましょう。
望遠鏡は小型のものでじゅうぶん。とても小さい点のような天王星を見つけるには、望遠鏡や双眼鏡を三脚などで安定させてから見るのがおすすめです。
月は日本時間18時ごろに天王星のすぐ北(上)をかすめ、月食が起こる間はだんだん離れていきます。最接近のころは空も月もまだ明るいので、天王星をとらえるのは難しいかもしれません。サハリンからシベリア、北極域にかけては、月が天王星を隠す天王星食も見られます。