月食は、地球の影の中に月が入りこみ、月が欠けて見えたり月の色が変化したりする現象です。
もうすこし詳しく見てみましょう。
宇宙空間では、太陽に照らされた地球の後ろ側(夜の方向)に地球の影が伸びています。地球のまわりを回る月がこの影の中に入ってくると、月面にその影が落ち、月食が起こります。このとき太陽‐地球‐月は一直線に並んでいますから、月食は必ず満月のタイミングで起こります。
しかし反対に、満月になるたびに月食が起こるわけではありません。これは、月の公転軌道が地球の公転軌道(つまり、地球の影の中心が位置する場所)に対して5度ほど傾いているからです。この傾きのために、満月はたいてい(地球の公転軌道に対して)地球の影の上下にずれます。ちょうどいい位置で満月になると、地球の影と重なり月食となって見えるわけです。
地球の影の大きさ(見かけの直径)は、月3個分ほどです。この影の中に月が全部入ってしまう状態を「皆既食」と呼び、そのような皆既状態が見られる月食を「皆既月食」と呼びます。月が地球の影の中心に近いところを通れば、皆既状態が長く続くことになります。今回の月食では約1時間です。
また、影の一部だけが月を隠している状態は「部分食」と呼び、月食全体を通じて部分食しか見られない月食を「部分月食」と呼びます。皆既食の前後にも部分食が起こっていて、月が地球の影の中を動いていくにつれて白い満月→部分食→皆既食→部分食→白い満月、と変化していきます。
さらに、地球の影(正確には「本影(ほんえい)」)の外側には、一回り大きな「半影(はんえい)」が広がっています。この半影の中に月が入っている状態を「半影食」と呼びますが、半影は薄いため、半影食のときに月が暗くなっているようすは目で見るだけではわかりにくいかもしれません。
ところで、月食のとき太陽‐地球‐月が一直線に並んでいるということは、月から観察すると太陽と地球が重なって見えます。シミュレーション動画で確かめてみてください。2009年には日本の月探査機「かぐや」が地球のダイヤモンドリングを撮影しましたが、もしかしたら将来、人類が直接このような光景を目撃する日が来るかもしれませんね。