11光年彼方の系外惑星はどのくらい地球に似ているか
【2018年7月18日 Carnegie Science】
天の川銀河内に存在する星の約7割は、太陽よりもずっと低温で小さい「赤色矮星」と呼ばれる分類の天体である。これら赤色矮星の多くには、その周りを回る惑星が少なくとも1つ存在すると推測されている。太陽系から最も近い系外惑星を持つケンタウルス座の「プロキシマケンタウリ」や、7つの惑星を持つみずがめ座の「TRAPPIST-1」といった、近年話題になっている星々も赤色矮星だ。また、昨年秋に地球サイズの系外惑星が発見された、地球からわずか11光年の距離に位置するおとめ座の「Ross 128」も赤色矮星である(参照:「11光年彼方に温暖な地球サイズの系外惑星」)。
ブラジル国立天文台のDiogo Soutoさんたちの研究チームは、スローン・デジタル・スカイサーベイの装置「APOGEE」を使った近赤外線の分光観測から、Ross 128の炭素や酸素、マグネシウム、鉄などの存在量を初めて詳しく調べた。中心の星にどのような元素がどのくらいの量存在しているのかを調べると、周りの惑星の組成も推測できるようになり、その惑星がどのくらい地球に似ているのかを予想するために役立つ。
若い星の周囲に存在するガスや塵の円盤の内部では地球のような岩石質の惑星が形成されるが、中心星の化学組成は円盤を構成する物質にも影響を及ぼすため、ひいては惑星に存在する鉱物や惑星の内部構造も中心星の組成の影響を受けることになる。たとえば、惑星内部の核とマントルとの質量比は、マグネシウム、鉄、ケイ素の量によって制御される。
研究チームでは、中心星Ross 128におけるマグネシウムに対する鉄の存在比から、惑星Ross 128 bの核が地球よりも大きいらしいことを示した。また、惑星の質量の下限値と中心星の物質の量をもとに、直接計測することができない惑星の半径について、その範囲を推測することもできた。
惑星の質量と半径がわかれば密度が計算でき、そこから惑星がどのような物質から構成されているのかを知ることもできる。Ross 128 bの半径は最大で地球の1.5倍程度とみられ、この惑星が岩石質である可能性が高いことを示している。
また、中心星の温度と惑星の半径の推測値から、中心星の光が惑星の表面でどのくらい反射されているのかを見積もったところ、この惑星は穏やかな気候であるらしいことも示された。「Ross 128 bは地球の双子ではありませんし、地質学的な活動については多くのことがわかっていませんが、今回の観測研究によって、この惑星は表面に水が液体で存在しうるものであるという主張を強固なものにすることができました」(Soutoさん)。
〈参照〉
- Carnegie Science:Rocky planet neighbor looks familiar, but is not Earth’s twin
- The Astrophysical Journal Letters:Stellar and Planetary Characterization of the Ross 128 Exoplanetary System from APOGEE Spectra 論文
〈関連リンク〉
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