木星に多数の新衛星発見、総計79個に
【2018年7月20日 カーネギー研究所】
米・カーネギー研究所のScott S. Sheppardさんたちが、チリのセロ・トロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡などによる観測から、木星に10個の新衛星を発見した。直径は1~3kmほどとみられている。
Sheppardさんたちが本来探していたのは、冥王星よりも遠くに存在するかもしれないと考えられている大質量の天体だ。「捜索を行っていた空域付近に偶然木星が位置していたため、幸運にも新しい衛星を発見することができました」(Sheppardさん)。
発見後に行われたチリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡や米・ハワイのすばる望遠鏡、ジェミニ望遠鏡などによる追加の観測を経て軌道が計算され、これら10個の新天体が確かに木星の周りを公転する衛星であることが確認された。木星の総衛星数はこれで79個(未確定のものを含む)となる。
新しい10個の衛星のうち7個は、木星から約2000万km以上離れたところを約1.5~2年の周期で公転している。いずれも、木星の自転の向きと反対方向に公転する逆行衛星だ。既知の逆行衛星も含めて、これらは、かつて複数の大きな天体だったものが小惑星や彗星と衝突して形成されたものと考えられている。
残る3個のうち2個は、木星の近くを1年以内で公転している。これらは木星の自転と同じ向きに公転する順行衛星だ。この付近に軌道を持つ衛星群はすべて軌道の距離や傾斜角が似ていることから、大きな天体が崩壊した破片が衛星になったものと考えられている。
最後に残った「S/2016 J 2」と符号が付けられた衛星は、直径が1km以下と、これまでに見つかっている木星の衛星中では最小とみられている。何といっても奇妙なのはその軌道だ。
S/2016 J 2は、前述の7個の衛星と同じような距離を、木星の自転と同じ方向に約1.5年周期で公転している。つまり、逆行衛星が多数存在している領域を、他の衛星とは逆に、順行しているのだ。そのため、この風変りな軌道を持つ衛星と逆行衛星は正面衝突してしまう可能性もある。そもそも、この小さい衛星自身が、過去の正面衝突で残った最後の残骸かもしれないと研究者たちは考えている。
木星が誕生したころに同時にこれらの小衛星も作られていたとすると、生まれたばかりの惑星の周りに残っていたガスや塵の影響で小衛星は木星に引きずり込まれてしまっていたはずだ。これらの小衛星が残っているということは、実際には木星が落ち着いたあとに衛星が作られたことを意味している。
※アストロアーツ注:研究所のリリースなどでは「12個の新衛星」と発表されていますが、小惑星センター(下記〈参照〉リンク)では10個のみが新天体として報じられていることから、本記事でも「10個の新衛星」としてあります。おそらく2個は再発見と思われます。いずれにせよ「総数が79個」は同じです。
〈参照〉
- Carnegie Institute:A dozen new moons of Jupiter discovered, including one “oddball”
- Nature.com - News:Jupiter has 10 more moons we didn't know about - and they're weird
- The Minor Planet Electronic Circulars:
- MPEC 2018-O09(2018 July 17):S/2016 J 2
- MPEC 2018-O10(2018 July 17):S/2017 J 2
- MPEC 2018-O11(2018 July 17):S/2017 J 3
- MPEC 2018-O12(2018 July 17):S/2017 J 4
- MPEC 2018-O13(2018 July 17):S/2017 J 5
- MPEC 2018-O14(2018 July 17):S/2017 J 6
- MPEC 2018-O15(2018 July 17):S/2017 J 7
- MPEC 2018-O16(2018 July 17):S/2017 J 8
- MPEC 2018-O17(2018 July 17):S/2017 J 9
- MPEC 2018-O18(2018 July 17):S/2018 J 1
〈関連リンク〉
- Scott Sheppardさん:Jupiter's Known Satellites
- 国立天文台:惑星の衛星数・衛星一覧
- アストロアーツ:
- 【特集】木星とガリレオ衛星(2018年)
- 天体写真ギャラリー:木星(2018年)
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