太陽系から2番目に近い恒星にスーパーアース候補を発見
【2018年11月16日 ヨーロッパ南天天文台】
ヨーロッパ南天天文台ラシーヤ観測所の口径3.6m望遠鏡に備え付けられた分光器「HARPS」などを使った観測により、太陽系から6光年の距離に位置するへびつかい座の10等星「バーナード星(Barnard's Star)」の周りに、地球の3.2倍以上の質量を持つスーパーアース(地球の数倍サイズの岩石惑星)とみられる系外惑星の候補天体が発見された。
バーナード星は太陽系から2番目に近い恒星であり、連星系ではない単独の星としては最も近い。太陽系から4.2光年の距離にあり最も近い恒星系である3重連星に含まれる「プロキシマケンタウリ」にも系外惑星が見つかっていることから(参照:「太陽系に最も近い恒星に地球サイズの惑星を発見」)、今回の結果は太陽系から2番目に近い系外惑星(候補)の発見ということになる。
バーナード星は、バーナードループやバーナードの銀河などと同じく、アメリカの天文学者E. E. バーナードが1916年に発見しその名を残した天体だ。固有運動が最速の星としても知られ、100年の間に満月の見かけサイズの半分ほども天球上を動く。この星については長きにわたり惑星の発見を目指した観測が行われてきたが、今回、世界中の望遠鏡に設置された7つの観測機器が20年間にわたってとらえた膨大な観測データを合わせることで、初めての画期的な成果を得ることができた。惑星の重力に振り回されることで主星が地球からわずかに遠ざかったり近づいたりする動きを、主星が発する光のドップラー効果から観測する「視線速度法」で検出することができたのだ。
惑星はバーナード星から6000万km(太陽・地球間の0.4倍)ほど離れたところを約233日周期で公転している。赤色矮星であるバーナード星は質量が小さく低温で暗いため、惑星が主星から得るエネルギーは、地球が太陽から受けているエネルギーのわずか2%しかない。そのため惑星の表面温度は摂氏マイナス170度ほどと推測されており、少なくとも私たちが知る生命に適した環境ではなさそうだ。
バーナード星のような低質量星の周囲で形成される惑星として、スーパーアースは最も一般的なタイプと考えられている。また、この惑星の主星からの距離はスノーライン(水のような揮発性物質が凝縮して固体になる境界領域)付近にあり、理論的に惑星形成に適している場所と一致していることから、今回の天体が実際に惑星であるという信憑性は高い。
「この成果は、近傍の赤色矮星の周りにおける系外惑星の発見を目的とした『Red Dots』と呼ばれるプロジェクトなどによって組織された大規模な協力関係の結晶です。慎重な分析によって私たちは惑星の存在を99%確信していますが、間違いの可能性を排除するために今後も観測を続けます」(スペイン・カタルーニャ宇宙科学研究所 Ignasi Ribasさん)。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台:Super-Earth Orbiting Barnard’s Star
- Nature:A candidate super-Earth planet orbiting near the snow line of Barnard’s star 論文
〈関連リンク〉
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