フレアが惑星に及ぼす影響を定量的に評価

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恒星表面で発生するフレアが惑星に及ぼす影響が、モデルに基づいて定量的に評価された。惑星の大気や磁場により影響は大いに異なり、太陽系から最も近いプロキシマケンタウリの惑星は厳しい環境にあるとみられる。

【2019年7月19日 京都大学国立天文台

これまでに発見されている系外惑星の数は4000個を超えている。そのなかには、表面に液体の水が存在して生命が居住可能(ハビタブル)であると考えられる惑星も多数ある。

ハビタブル惑星はとくに、太陽より表面温度が低く光度も暗い「赤色矮星(M型星)」と呼ばれるタイプの恒星の周囲で多く発見されている。赤色矮星ではフレアと呼ばれる恒星表面の爆発現象が頻繁に起こり、その影響は惑星の居住可能性を左右すると考えられる。しかし、フレアの発生頻度や、惑星の大気や磁場の環境などを考慮した居住可能性の定量的な評価はこれまでされてこなかった。

フレアを起こした恒星と惑星の想像図
フレアを起こした恒星(左)と惑星の想像図(提供:Haruka Inagaki, Nami Kimura, Fuka Takagi and Yosuke A. Yamashiki)

京都大学の山敷庸亮さんたちの研究チームは、系外惑星探査衛星「ケプラー」の観測情報に基づいたフレアの発生頻度や規模、惑星の大きさや軌道分布の情報と、惑星大気の組成や厚みなどを考慮したモデルなどを元にして、ハビタブル惑星にフレアがどのような影響を及ぼすかを調べた。

その結果、地球程度の濃い大気が存在する惑星であれば、地表の放射線の強度は地球型生命に影響するほどにはならないことがわかった。地球のような磁場があれば、その影響はさらに小さくなるという。

一方、同じ計算から、太陽系に最も近い4光年彼方の赤色矮星「プロキシマケンタウリ」を巡る系外惑星や、太陽系から39光年と比較的近く、やはり赤色矮星である「TRAPPIST-1」の系外惑星の一つでは、惑星が中心星に近いために恒星から受ける紫外線が強く、宇宙空間に散逸する大気の量が地球の70倍以上も大きくなることが明らかになった。

こうした環境では磁場も弱いと考えられ、結果的に高エネルギー宇宙放射線が惑星表面に直接到達してしまうため、毎年1回発生する規模のフレアでも致命的な影響を受ける可能性があるという。これらの惑星系は太陽系から近いこともありとくに注目されているが、大気を維持するメカニズムなどがない限り、生命居住可能であると評価することは難しいようだ。

この研究では、赤色矮星ではない太陽型恒星で稀に起こる、規模の大きな「スーパーフレア」の影響についても評価を行っている。これまでに太陽で観測された最大規模のスーパーフレアが起こった場合、大気が極めて薄く磁場を持たない火星の場合は、地球と比べて1000~100万倍もの放射線強度になる可能性も確かめられた。

研究チームは今後、より多くの系外惑星系にモデルを適用して、どの系外惑星が生命を育む可能性が高いかの評価を継続していく。また、太陽系内の惑星にも同じモデルを用いて、月や火星における人間活動へ宇宙放射線が及ぼす影響も調べる予定だ。

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