電波銀河ケンタウルス座Aの巨大ジェットの根元にせまる
【2021年7月27日 EHT-Japan】
おとめ座の巨大楕円銀河M87の中心部を撮影してブラックホールの影をとらえた世界最大の「眼」が、巨大電波銀河ケンタウルス座A(NGC 5128)の中心部に迫った。
ケンタウルス座Aは電波の眼で見れば全天有数の大きさと明るさを持つ天体であり、中心核の超大質量ブラックホールから2方向に吹き出たジェットは、地球から見ると端から端まで満月16個分ものサイズに広がっている。このブラックホールの質量は太陽の5500万倍で、M87のブラックホール(太陽の65億倍)と天の川銀河の中心にあるブラックホール(太陽の400万倍)というよく研究された2天体の中間に位置するため、超大質量ブラックホールの一般的な性質を理解する上でも注目されていた。
各地の電波望遠鏡が連携して地球サイズの仮想的な巨大電波望遠鏡を実現するイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)は、M87の超大質量ブラックホールを観測したのと同じ2017年に、ケンタウルス座Aの中心部も観測していた。独・マックス・プランク電波天文学研究所のMichael Janßenさんたちの研究グループはこのデータを解析し、ジェットの根元を超高解像度でとらえた画像を作成した。
得られた画像はこれまで行われたどの高解像度観測と比べても16倍高い解像度を実現していた。地球から見たジェットの総延長は満月の16個分だが、EHTはその月面に置かれたりんごに相当する極めて小さな構造までとらえている。「初めて、光が1日で移動する距離よりも小さなスケールで、天の川銀河の外の電波ジェットを研究することができます。大質量ブラックホールから噴出するとても巨大なジェットがどのように生まれているかを間近で直接見ることができます」(Janßenさん)。
超大質量ブラックホールは周囲のガスや塵を引き寄せるが、その物質の一部がエネルギーを得て超高速で放出されるのがジェットだ。ブラックホールに由来すると考えられるジェットはいくつもの銀河で観測されているが、ときに光速近くまで加速されるジェットがどのようにエネルギーを得て、どうしてこれだけ収束したまま銀河の中を通り抜けているのかはよくわかっていない。そのため、今回のようにジェットの根元をとらえた研究が必要とされている。
ジェットが2本に分かれているように見えるのは、円錐状に広がるジェットの端が中央部に比べて明るいことを示している。ジェットの端が明るい現象はM87などほかの銀河中心核でも知られているが、ケンタウルス座Aのものは特に顕著だという。「今回の画像のおかげで、ジェットの端が明るくなる現象を再現できない理論モデルを除外することができます。これは、ブラックホールによって生成されたジェットをよりよく理解するのに役立つ重要な特徴です」(独・ビルツブルク大学 Matthias Kadlerさん)。
今回の画像では超大質量ブラックホールそのものこそはとらえていないが、ジェットの根元まで写し出したことで、ブラックホールが潜む位置を従来より細かく特定することができた。今後より短い波長帯の電波でさらに高い解像度を達成し、ケンタウルス座A中心核の超大質量ブラックホールが撮影されることが期待される。
〈参照〉
- EHT-Japan:イベント・ホライズン・テレスコープが描き出した最も近い電波銀河の心臓部
- Nature Astronomy:Event Horizon Telescope observations of the jet launching and collimation zone in Centaurus A 論文
〈関連リンク〉
- EHT-Japan
- アルマ望遠鏡
- アストロアーツ 天体写真ギャラリー:ケンタウルス座A(NGC 5128)
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