2025年の主要なミラ型変光星の光度変化予測

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数か月以上の長い周期で明るさが大きく変わるミラ型変光星のうち主なものについて、2025年の光度変化の予測グラフを紹介しよう。今年はくじら座のミラ、はくちょう座χなどがおすすめだ。

【2025年1月9日 高橋進さん】

太陽質量の2~5倍くらいの星が赤色巨星段階になると、脈動による光度変化を見せることがあります。その中で変光周期が100日以上で変光幅が2.5等級以上あり、比較的規則的な変光を見せるものを「ミラ型変光星」と呼んでいます。光度変化が大きいことから変光の様子がわかりやすく、初心者の方でも観測が容易です。

こうしたミラ型変光星の中で比較的明るく観測しやすい9星について、いつどれくらいの明るさになりそうか予想グラフを作成しました。ぜひ参考にして観測にご利用ください。

※ミラ型変光星の極大予報は様々な天文誌や観測団体で公表されています。データの選択や計算手法により日付や等級に関して多少のずれはありますが、自分の気に入った予報をお使いください。筆者は基本的に日本変光星観測者連盟のデータを使い、データが少ない場合などはアメリカ変光星協会のデータも参考にして、過去10年間ほどの周期をもとにして計算しています。

ミラ型変光星の2025年の変光予想
ミラ型変光星の2025年の変光予想。画像クリックで表示拡大(提供:高橋さん)

まず、ミラ型変光星の代表星であるくじら座のミラ(ο Cet)が3月初旬に極大を迎える見込みです。ここ2~3年は極大期に太陽が近かったため、極大の様子がきちんととらえられなかったのですが、2025年は3年ぶりに夕方の西の空での極大が観測できそうです。2024年11月の極小がわりと明るめだったことから、今回の極大は明るいものになるのではと期待されています。

ミラ周辺の星図
ミラ周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成、以下同)

2025年のミラ型変光星の中で最高の条件で観測されるのが、はくちょう座χ(χ Cyg)です。8月下旬に4等くらいの極大になると期待されます。2月ごろにおよそ13等の極小を迎え、その後にゆっくりと増光していきますが、5月ごろに一時的に増光が停滞する時期があります。その後は1日に0.1等ほどの急速な増光を見せます。

はくちょう座χ周辺の星図
はくちょう座χ周辺の星図

しし座R(R Leo)はしし座の前足の近くにあり、位置がわかりやすく人気の変光星です。1月後半に6等くらいの極大になると予想され、深夜に見やすいでしょう。また、11月の終わりごろに今年2回目の極大があり、こちらは未明から明け方の空で見られそうです。

しし座R周辺の星図
しし座R周辺の星図

さんかく座R(R Tri)は9月下旬におよそ6.5等の極大と予報されています。深夜に高く上るさんかく座のγ星(4等級)からたどっていくと見つけやすいでしょう。増光期には2日に0.1等くらいの速度で明るくなっていきますので変化がわかりやすく、おすすめです。

さんかく座R周辺の星図
さんかく座R周辺の星図

おとめ座R(R Vir)は周期が146日とミラ型の中ではわりと短く、一年の間に3回くらい極大があります。その中でも2025年は7月中旬の極大がおすすめです。およそ7等の極大になるとみられ、5月初旬の極小期から観測すると短期間で光度曲線が描けます。ぜひチャレンジしてみてください。

おとめ座R周辺の星図
おとめ座R周辺の星図

ミラ型変光星の観測は、大きな望遠鏡がなくても双眼鏡や肉眼でも可能です。また、こうした観測は恒星の進化の研究に不可欠なものであり、周期光度関係から距離測定などにも使われる天体です。変光星を観測して、楽しい一年をお過ごしください。


星ナビ2025年1月号ではこのほか、期待されながら昨年中の爆発が起こらなかった再帰新星のかんむり座Tや、食変光星ペルセウス座βアルゴルなど、ミラ型変光星以外も解説いただいています。

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