超新星残骸に大量のニッケル 究極的核融合プロセスの初証拠
【2015年3月18日 京都大学】
NASAおよび米・メリーランド大学の山口弘悦さんらの研究チームはX線天文衛星「すざく」を使って、わし座の方向約3万3000光年彼方にあるIa型超新星残骸「3C 397」を観測した。 Ia型超新星とは、白色矮星(恒星の燃えかす)を含む連星系での爆発的核融合による超新星爆発で、ケイ素やカルシウム、鉄など私たちの人体と生活に欠かせない元素が生成される。
今回「すざく」はこの天体から初めて、クロム、マンガン、鉄、そしてニッケルによる輝線の検出に成功した。とりわけニッケルの全質量は太陽の重さの1割に相当し、過去に観測された他の超新星残骸と比べて3倍から5倍という膨大な量だ。
白色矮星は、主に炭素と酸素で構成されている。通常の元素はそれぞれ陽子と中性子の数が等しいが(炭素は6個ずつ、酸素は8個ずつ)、超新星爆発時にそれらを材料とした核融合で生成されたはずのニッケルは、陽子よりも中性子の数が2個多い。この差分の中性子はどこから来たのか。ネオンの同位体22Ne(陽子10個、中性子12個)など中性子を多く含む元素もその供給源にはなるが、白色矮星に含まれる量はわずかで、今回検出された大量のニッケルを生成するにはとても足りない。つまり、中性子が新たに作られていると考えられるのだ。そのプロセスが、陽子が電子を飲み込む「電子捕獲」である。
電子捕獲は、特に高温・高密度の極限環境でのみ起こる超新星核融合の最終プロセスだ。Ia型超新星で電子捕獲が起こることは、日本の理論天文学者を中心に古くから提唱されていたが、今回の研究で初めてその確かな証拠がとらえられたことになる。
〈参照〉
- 京都大学: Ia型超新星の核融合最終プロセスをX線で解明
- 日本天文学会 2015年春季年会: Ia型超新星の核融合最終プロセスをX線で解明
〈関連リンク〉
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