Ia型超新星の名残から、非対称な爆発を示す元素分布を観測
【2013年7月8日 京都大学】
京都大学などの研究チームが、1006年に起こったIa型超新星爆発の名残りを観測し、重い元素が偏って分布していることを発見した。Ia型超新星の明るさの一定性を疑う新しい成果だ。
おおかみ座の方向約7000光年彼方にある超新星残骸(SNR)1006は、1006年に目撃された記録が残る超新星爆発の名残だ。爆発時の衝撃波は直径60光年にまで広がり、内部では星の残骸などが100万〜数千万度にまで加熱されてX線を放っている。
元になった超新星は核暴走型のIa型超新星(注)と呼ばれる種類のものだ。Ia型超新星は絶対的な明るさが一定とされるため、宇宙が加速的に膨張していることを突き止めるのにも一役買った。だが近年、Ia型超新星の明るさの一定性を疑問視する研究成果もいくつか出ている。
京都大学理学研究科などの研究グループが超新星1006を日本のX線天文衛星「すざく」で観測したところ、ケイ素・硫黄・鉄などの重い元素のみ、分布がある方向に偏っていることがわかった。これは爆発時の状態を反映したものとみられており、Ia型超新星の爆発時の元素分布を初めて明らかにしたものだ。
Ia型超新星が今回見られたような非対称な爆発をするのであれば、観測方向によって明るさが異なってくる。したがって、標準光源として使うためには具体的な爆発メカニズムを知り、それに基づいて明るさの補正をする必要がある。
研究チームでは今後、同天体の奥行き方向にも元素分布の偏りがないかを調べ、その立体構造の全貌を解明することを目指す。
注:「Ia型超新星」 超新星は大まかに、重い星が爆発する「重力崩壊型」と白色矮星が爆発する「核暴走型(Ia型)」の2タイプに分けられる。